腐心ふしん)” の例文
彼女の袂へ忍ばすなどの腐心ふしんまでこころみたが、ついには彼女の良人高貞を亡き者とするにかずと考え、将軍家にざんして、討手を向け
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貧乏びんばふ百姓ひやくしやうはいつでもつちにくつゝいて食料しよくれうることにばかり腐心ふしんしてるにもかゝはらず、作物さくもつたはらになればすで大部分だいぶぶん彼等かれら所有しよいうではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
寺の庫裡くりの入り口の広場にも小作米こさくまいがだんだん持ち込まれる。豊年でもなんとか理屈をつけてはかりを負けてもらう算段に腐心ふしんするのが小作人の習いであった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
著者ちよしやはこれに氣附きづいたので、此數年間このすうねんかん其編纂そのへんさん腐心ふしんしてゐたが、東京帝國大學とうきようていこくだいがく地震學教室ぢしんがくきようしつける同人どうにん助言じよげんによつて、大正十五年たいしようじゆうごねんいたつてやうやこれおほやけにする程度ていどたつした。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
というような、極めて悪性な讒言ざんげんと、偽装ぎそう腐心ふしんし、そのまに、毛利家の軍事顧問を入れ、城郭じょうかくほりを深め、塀を高くしていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平家がおこなっててっしなかった武家政治に、頼朝は、自分の理想を加え、民衆の力も盛って、施政のうえに、今までなかった新しい方法を見出そうと腐心ふしんしていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時折は安土へも招かれたりしている多くの伴天連ばてれんたちは、どうかしてこの人を自己の宗門に入れようものと、あらゆる腐心ふしんをしてみたが、信長の心をつかむことは
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おととい、大書院いちめんのふすまに、菊の図を構想し、さらに渓流けいりゅうのそばに菊慈童きくじどうを配すつもりで、その容貌に腐心ふしんしていると——いつのまにか秀吉がうしろに来て眺めていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに反して一八郎の頭脳あたまは、怖ろしい緻密ちみつさと速度でこの奇遇きぐうの利害を考え始めた。あの二人も阿波の密境へ入り込もうとする者、また自分たちも久しく阿波の内情を探ろうとして腐心ふしんするものだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ阿波の内情を探ることにのみ腐心ふしんしてきた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
贈賄者はみな腐心ふしんする。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)