聴聞ちょうもん)” の例文
旧字:聽聞
ここにいて聴聞ちょうもんいたしておりまする——侍坐いたしておりまする——さような心持を持って、何気のう咳ばらいをしたのでございまする
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうわさを聞き伝へ、近隣諸国の人々貧富貴賤きせんかちなく南蛮寺に群集し、つは説教を聴聞ちょうもんし、且つは投薬の恵みにあづかる。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
親鸞 往生おうじょうの次第ならばもはや幾度も聴聞ちょうもんしているはずだがな。まことに単純な事で私は別に話し加える事もありませんがな。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ただしもとこの寺に一匹の狸がいて、夜分縁先えんさきにきて法談を聴聞ちょうもんしていたが、のちに和尚の机の上から石印を盗んでいずれへか往ってしまった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
日本へ移住した数はすくなからぬので、既に僧行基が奈良のある寺で説教を試みた時、髪に豚の脂の匂いのする女が来て聴聞ちょうもんしたという話がある位
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
長上の訓諭を聴聞ちょうもんする時など、すべて改まってまじめな心持ちになってからだをちゃんと緊張しようとする時にきっとこれに襲われ悩まされたのである。
笑い (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
清くて読み奉らるる時には、かみ梵天帝釈ぼんてんたいしゃくよりしも恒河沙こうがしゃの諸仏菩薩まで、ことごと聴聞ちょうもんせらるるものでござる。よって翁は下賤げせんの悲しさに、御身おんみ近うまいる事もかない申さぬ。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
終日佛間ぶつまにいて、冥想めいそうふけるとか、看経かんきんするとか、何処かの貴い大徳だいとこを招いて佛法の講義を聴聞ちょうもんするとか、云うような日が多くなったので、乳人や女房たちは愁眉しゅうびを開いて
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「飲みながらがい、召飯めしあがりながら聴聞ちょうもんをなさい。これえ、何を、お銚子ちょうしを早く。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早くから梟の身のあさましいことをご覚悟かくご遊ばされ、出離の道を求められたじゃげなが、とうとうその一心の甲斐かいあって、疾翔大力さまにめぐりあい、ついにその尊いおしえ聴聞ちょうもんあって
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一人の婆さんが数珠じゅずをつまぐってやって来て、与八が板の間で説教をしているのを子供たちに混って聴聞ちょうもんしていたが、それが済むと右の婆さんが、ずかずかと与八の直ぐ前まで進んで来て
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
朝夕ちょうせき禅房の掃除もするし、聴聞ちょうもんの信徒の世話もやくし、師の法然にもかしずいて、一沙弥いちしゃみとしての勤労に、毎日を明るく屈託くったくなく送っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やす女の家は、もと小松の町の、本蓮寺ほんれんじという寺の門徒であったので、この寺の報恩講には今でも人に気付かれずに、やす女が参詣さんけいして聴聞ちょうもんのむれの中にまじっている。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ただ一人でも穂吉のことから、まことに菩提ぼだいの心を発すなれば、穂吉の功徳くどく又この座のみなの衆の功徳、かぎりもあらぬことなれば、必らずとくと聴聞ちょうもんなされや。昨夜の続きを講じます。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
が、予は姫君が恋しゅうて、御意ぎょい得たいと申すのではない。予の業欲ごうよくに憧るる心は、一度唐土ひとたびもろこしにさすらって、紅毛碧眼の胡僧こそうの口から、天上皇帝の御教みおしえ聴聞ちょうもんすると共に、滅びてしもうた。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「はい、わたしもぜひ聴聞ちょうもんをさしていただきたいつもりでございます」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが、あなたがたは国のお寺では聴聞ちょうもんなされませぬかの。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「それで思いあたりました。どこかでお見かけしたように思われたのは、都であったか。それでは、吉水の房へ、聴聞ちょうもんに来られたこともあったのじゃな」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加賀の金沢などではこの遊びをオジャコトといっている。御座は年忌ねんきでなくとも僧をしょうじ、説教を聴聞ちょうもんする人寄ひとよせであるが、やはり法事のように食物が出たものと思われる。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
折角せっかくこらえているようでございます。よく物が申せないのでございます。それでもどうしても、今夜のお説教を聴聞ちょうもんいたしたいというようでございましたので。もうどうかかまわずご講義を
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
皆かしこまって聴聞ちょうもんいたしていました。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
聴聞ちょうもん仰せつけられたいもので……
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)