竜巻たつまき)” の例文
その代り一本の茶褐色ちゃかっしょくの煙がすーっと立ちのぼり、轟々ごうごうたる音をたてて天空てんくうはるかに舞いあがっていく。その有様は、竜巻たつまきの如くであった。
あたかも大洋上の暴風のように、狂いだつ栄光グロリアが展開するのを、諸君は見たのだ。強力暴戻ぼうれいなる意力の竜巻たつまきが過ぎるのを、諸君は見たのだ。
みごとなにじが立ってその下の海面が強く黄色に光って見えた。右舷うげんの島の上には大きな竜巻たつまきの雲のようなものがたれ下がっていた。ミラージュも見えた。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それは東南からあおった風が波を捲いて、竜巻たつまきのように走って来て、この船の横腹にどうと当って砕けたからです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
海豚いるか』『くじら』『竜巻たつまき』『黒潮くろしお』『海賊かいぞく』『コロンブス』——この六隻はA国海軍が自慢する大潜水艦で、『八島』や『千代田』に負けぬほど強いやつだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
竜は竜巻たつまきと一緒に昇天するものとされている。その脚や足をチラリとでも見た人は、偉人になると信じられる。
海へ行ってこんどは竜巻たつまきをやったにちがいないんだ。竜巻はねえ、ずいぶんすごいよ。海のには僕はいったことはないんだけれど、小さいのを沼でやったことがあるよ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
竜巻たつまきだ、と思ううちにも、烈しい風は既に頭上をよぎろうとしていた。まわりの草木がことごとくふるえ、と見ると、その儘引抜かれて空にさらわれて行く数多あまたの樹木があった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
それは、フローラという緑毛の処女が、そもそも神秘的な存在であるように、黄金郷という名を、聴いただけでさえ、三人は竜巻たつまきの中に巻き込まれたような気がしたらしい。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
瞬く間に立蔽たちおおう、黒漆こくしつ屏風びょうぶ一万枚、電光いなびかりを開いて、風に流す竜巻たつまき馳掛はせかけた、その余波なごりが、松並木へも、大粒な雨ともろともに、ばらばらと、ふな沙魚はぜなどを降らせました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竜巻たつまきのおそろしさ、潮流を舟で横ぎる時の苦労さ、海で見る月夜のうつくしさ、いろ/\の話をぢいから聞いたものですが、今それらの話を一つ/\してゐることはできません。
海坊主の話 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
暴動は社会の大気中の一種の竜巻たつまきであって、ある気温の状態によってにわかに起こり、渦巻うずまきながら、上り、かけり、とどろき、つかみ取り、こわし、つぶし、砕き、根こぎにし
この現象が少し大きくなると、庭先などに出来る小規模な竜巻たつまきになる。
「茶碗の湯」のことなど (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「メインマストの上のあたりをごらんなさい。なにか黒い大きなものが立っています。竜巻たつまきかな、いや竜巻じゃない」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二人の友はたえず愉快に仕事をした。ほおあおせぎすのオリヴィエも、力のうちに浸っていた。彼らの屋根裏の室には喜悦の竜巻たつまきが吹き過ぎていた……。
そして時々大きな渦ができ、それがちょうど竜巻たつまきのようなものになって、地面から何尺もある、高い柱の形になり、非常な速さで回転するのを見ることがあるでしょう。
茶わんの湯 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
荒れに荒れた海流が二十かいり以上のはやさで、湾の内へ流れこんでいるではないか。そして水門のあたりには竜巻たつまきのような水煙が、もうもうとしてたちこめているではないか。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
「いやいや、そのご謙遜けんそんは恐れ入ります。早速竜巻たつまきに云いつけて天上にお送りいたしましょう。お帰りになりましたらあなたの王様に海蛇めがよろしく申し上げたとっしゃって下さい。」
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
疾駆する鳥のように、それは樹木のこずえに吹きつけて波打たした。竜巻たつまきに包まれて通りゆくミケランジェロの神のようだった。それはクリストフの頭の上を通っていった。
まっ赤な水柱が、竜巻たつまきのように『最上』の行手をさえぎった。敵の逆襲である。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
濛々もうもうたる怪しき白い霧、赤い霧、青い霧、そのほかいろいろが、竜巻たつまきのような形であらわれ、ゆらゆらとれているのを面白がっている間に、いつしか部屋の中は一面の霧の海としてしまって
竜巻たつまきについてもかなり正しい観察と、真に近い考察がある。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)