立顕たちあらわ)” の例文
旧字:立顯
すすき彼方あなた、舞台深く、天幕の奥斜めに、男女なんにょの姿立顕たちあらわる。いつわかき紳士、一は貴夫人、容姿美しく輝くばかり。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すすき彼方あなた、舞台深く、天幕テントの奥斜めに、男女なんにょの姿立顕たちあらわる。いつわかき紳士しんしいつは貴夫人、容姿ようし美しく輝くばかり。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
フト魔がしたような、髪おどろに、骨あらわなりとあるのが、鰐口わにぐちの下に立顕たちあらわれ、ものにも事を欠いた、ことわるにもちょっと口実の見当らない、蝋燭の燃えさしを授けてもらって
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見る/\うちに、べら/\と紙がげ、桟がされたやうに、ありのまゝで、障子がせると、羽目はめ破目やぶれめにまで其の光がみ込んだ、一坪の泉水をうしろに、立顕たちあらわれた婦人おんなの姿。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「よくねえ、」と声を懸けて、逸早いちはやく今欄干に立顕たちあらわれたその女中が出迎えた。帳場のあかりと御神燈の影で、ここに美しく照らし出されたのは、下谷したや数寄屋町大和屋やまとやわけの蝶吉である。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一際ひときわはげしきひかりもののうちに、一たび、小屋の屋根に立顕たちあらわれ、たちまち真暗まっくらに消ゆ。再びすさまじじきいなびかりに、鐘楼に来り、すっくと立ち、鉄杖てつじょうちょうと振って、下より空さまに、鐘に手を掛く。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(おお、お坊様ぼうさま。)と立顕たちあらわれたのは小造こづくりの美しい、声もすずしい、ものやさしい。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふとどこともなく立顕たちあらわれた、世にもすごいまで美しいおんなの手から、一通玉章たまずさを秘めた文箱ふばこことずかって来て、ここなる池で、かつて暗示された、別な美人たおやめが受取りに出たような気がしてならぬ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
図書、その切穴より立顕たちあらわる。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鯉、蟹、前途ゆくて立顕たちあらわる。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)