トップ
>
空洞
>
くうどう
ふりがな文庫
“
空洞
(
くうどう
)” の例文
差し当たり日常の家庭にできた
空洞
(
くうどう
)
は、どこにも捻くれたところのない葉子が一枚加わっただけでも、相当紛らされるはずであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「もしもし終点でございますよ」眼だけが
空洞
(
くうどう
)
のように
呆
(
ぼ
)
んやりみひらいている僕の肩を
叩
(
たた
)
いて
車掌
(
しゃしょう
)
が気味悪そうに云った。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
地底に円形の
空洞
(
くうどう
)
を作り、その円形の周囲と天井とに、巨大なカンバスを張りつめ、空と海との油絵を描かせたのです。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして、
鉢
(
はち
)
の
下
(
した
)
は、みかん
箱
(
ばこ
)
の
大
(
おお
)
きさの
空洞
(
くうどう
)
で、つまり、
鉢
(
はち
)
の
下
(
した
)
に
何
(
なに
)
かをかくしておく
場所
(
ばしょ
)
ができているのであつた。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
根の間から生え出た
茸
(
きのこ
)
が、病衰した樹木の汁を吸って、それをしだいに
空洞
(
くうどう
)
になしていた。黒
蟻
(
あり
)
が朽木を砕いていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
この物語られた世界をのぞいたとき、人は見た——内心の
空洞
(
くうどう
)
と生物学的な衰微とを、最後のせとぎわまで、世間の目から隠している、あの優美な自制を。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
ただ彼は地下に
空洞
(
くうどう
)
の存在を仮定し、その空洞を満たすに「風」をもってしたのは困るようであるが、この「風」を
熔岩
(
ようがん
)
と翻訳すれば現在の考えに近くなる。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
またパンの神が夜ごとにやってきて、柳の幹の
空洞
(
くうどう
)
の穴を一つ一つ指でふさいで笛を吹かないとは限らない。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
俺はその躰術が見たいので、わざと
唐木
(
からき
)
の
空洞
(
くうどう
)
に小判があると言ひ出したんだ——一萬兩の大金が俺の言つた通り唐木に空洞を拵へて隱してあつた事は驚いたよ。
銭形平次捕物控:164 幽霊の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
なんじょう右門の
慧眼
(
けいがん
)
ののがすべき、臭いなと思ってすっくと立ち上がりながら近づいていって、こころみにたたいてみると、果然出っ張った土壁の奥は
空洞
(
くうどう
)
らしく
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
彼の額が月の光で白く浮きあがり、
空洞
(
くうどう
)
のようにあいた唇のあいだから、歯があらわに見えた。
源蔵ヶ原
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
正面と横とから、柿丘氏の右胸部にある大きい
空洞
(
くうどう
)
の体積を、
精
(
くわ
)
しく計算なすったのでしたね。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二通の手紙を出したあとのかれの胸には、大きな
空洞
(
くうどう
)
があいており、その空洞の中を、
悔恨
(
かいこん
)
と、
嫉妬
(
しっと
)
と、未練と、そしてかすかな
誇
(
ほこ
)
りとが、代わる代わる風のように
吹
(
ふ
)
きぬけていた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
世才があればこんな混乱期にこそ世の中の随所に
空洞
(
くうどう
)
を見つけて縦横に
金儲
(
かねまう
)
けの手を打つこともできるわけだが、私のやうなものはハンコ屋にでもなるのが最上の思ひつきだつたのだ。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
読んで意味のわからない
筈
(
はず
)
はなかった。だが意味は読むかたわらに消えて行って、それは心のなかに
這入
(
はい
)
って来なかった。今、彼は自分の世界がおそろしく
空洞
(
くうどう
)
になっているのに気づいた。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
平衡感覚ヲツカサドル神経ハドコヲ通ッテイルノカ知レナイガ、イツモ後頭部ノトコロ、チョウド
脊髄
(
せきずい
)
ノ真上ノトコロニ
空洞
(
くうどう
)
ガ生ジタヨウナ感ジガシ、ソコヲ中心ニ体ガ一方ヘ傾クノデアル。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すると、その板が
蓋
(
ふた
)
になっていて、下に大きな箱のような
空洞
(
くうどう
)
があることがわかりました。つまり、クッションの中に、大きな箱がつくりつけてあったのです。
電人M
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
まっ黒な大きい
空洞
(
くうどう
)
の気が胸にはいってくる。自分の後ろが恐ろしくなってふり返りたくなる。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
……今度の大戦で荒らされた地方の森に巣をくっていた
鴉
(
からす
)
は、砲撃がやんで数日たたないうちにもう帰って来て、枝も何も弾丸の雨に吹き飛ばされて坊主になった木の
空洞
(
くうどう
)
で
芝刈り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
中は
空洞
(
くうどう
)
であった。つまりこの金環は、黄金の
管
(
くだ
)
を丸く曲げて環にしてあるものだった。
見えざる敵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私は自分の胸が
空洞
(
くうどう
)
になり、そこをこがらしが吹きぬけるような、云いようのないかなしさに浸された。云いようのないかなしさ。いまでもそう云うほかに表現する言葉がみつからないのである。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
屋根や垣がさっと転覆した勢をその
儘
(
まま
)
とどめ、黒々とつづいているし、コンクリートの
空洞
(
くうどう
)
や
赤錆
(
あかさび
)
の鉄筋がところどころ入乱れている。横川駅はわずかに乗り降りのホームを残しているだけであった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
残念
(
ざんねん
)
ながら、その
空洞
(
くうどう
)
は、
文字通
(
もじどお
)
りの
空洞
(
くうどう
)
で
何
(
なに
)
もない。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
扱
(
あつか
)
つた人だけに、材木の中へ隱したんぢやあるまいかと思ひますが、どうでせう。例へば材木の
空洞
(
くうどう
)
に入れるとか——一萬兩といふ重さは四十貫目もありますが、千兩箱十の中味ですから、たいした量ぢやありません
銭形平次捕物控:164 幽霊の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は顔の筋肉が
硬
(
こわ
)
ばった様になって、無論
挨拶
(
あいさつ
)
なんか出来なかった。先方でも、
空洞
(
くうどう
)
の様なまなざしで、あらぬ
方
(
ほう
)
を見つめていて、私の方など見向きもしなかった。
毒草
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
時代のついた厚顔さをそなえ、時には標石でめぐらされた、のろまな巨大な石の
空洞
(
くうどう
)
であった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
婦人の
堕胎
(
だたい
)
をはかったり、結核患者の
病巣
(
びょうそう
)
にある
空洞
(
くうどう
)
を、音響振動を使って、見事に破壊し、結核病を再発させるばかりか、その一命を
断
(
た
)
とうという恐ろしい
企
(
くわだ
)
てをした人なんです。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
筒の頭が開いて内にはがらんとした
空洞
(
くうどう
)
ができ、そうしてそれが次第に内部へ広がると同時に、胴体の側面が静かにふくれ出してどうやら
壺
(
つぼ
)
らしいものの形が展開されて行くのである。
空想日録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その光で目測してみますと、そこは二十メートル四ほうもあるような、天井の高い、広い
空洞
(
くうどう
)
です。
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
夫人を
堕胎
(
だたい
)
させることばかりに注意力を向け、おのれの
空洞
(
くうどう
)
が激しい振動をおこして、
結締織
(
けったいしき
)
を破壊させ、自分の生命を断ってしまうなどということを一向に注意してやらなかったのです。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
目には見えないがそれと知らるる増水、波の悲壮なささやき、橋弧の気味悪い大きさ、頭に浮かんでくるその陰惨な
空洞
(
くうどう
)
中への墜落、すべてそれらの暗影は人を
慄然
(
りつぜん
)
たらしむるものに満たされていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“空洞”の意味
《名詞》
空洞(くうどう)
中に穴があいて空間があること。また、その空間。
ほらあなのこと。
肺結核などにより体内の組織が液化して空間が生じること。
(出典:Wiktionary)
空
常用漢字
小1
部首:⽳
8画
洞
常用漢字
中学
部首:⽔
9画
“空洞”で始まる語句
空洞木
空洞球状