祖父じじ)” の例文
……兄が台治荘たいじそう滕県城とうけんじょうで戦死してから、祖父じじ祖母ばばがあまり淋しがるので、こちらへ帰って来ましたの……もう二年になりますわ。
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
蓮華岳から越中沢岳(又は栂山)に至る迄の立山山脈との間に発源する祖父じじ谷・祖母ばば谷・五郎沢・薬師沢・岩苔いわごけ谷等を合せたものである。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
わたくし祖父じじ年齢としでございますか——たしか祖父じじは七十あまりで歿なくなりました。白哲いろじろ細面ほそおもての、小柄こがら老人ろうじんで、は一ぽんなしにけてました。
「叔父上にもお変りになりましたぞ。たくましくおなりになりました。祖父じじ様が御覧になったらどんなにお歓びでございましょう」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ジャワでは虎人を苦しめぬ内は祖父じじまた老紳士と尊称してこれをあがめる、多くの村に村虎一頭あり、村の某が死んで虎になったとその人の名をてる
「何の、お賑やかで何よりでございます。私共ももう直ぐお祖父じじさま、お祖母ばばさまでございますが、お宅では?」
伊太利亜の古陶 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「さアさあそこに見えられる、そなたの祖父じじさまお祖母ばばさま、お船に乗って、ようこそはるばる、そら見えた、まだ見えぬ、——おう、おう、そなたは目をつぶっているのか」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
祖父じじに就ても、こんな話がある。祖父が若い時分、撃剣の同門の何とかいう男が、あまり技芸に達していた所から、ひと嫉妬ねたみを受けて、ある夜縄手道なわてみちを城下へ帰る途中で、誰かに斬り殺された。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お柳は祖父じじさまが死んだので泣いてばかり居ります。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
火を吹いて居る禅門ぜんもん祖父じじ 正秀まさひで
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「あたしがここに居てやりますと、祖父じじ祖母ばばもたいへんに嬉しがるので、それを振りすててまで東京へ出たいとは思いません」
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
祖父じじ谷、祖母ばば谷の上流は五指を開いたように小谷が岐れて、悽愴な光を放つ赭色のガレが、酷たらしく山の肌に喰い込んでいる。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ひとほうけとやら、こんな場合ばあいには矢張やは段違だんちがいの神様かみさまよりも、お馴染なじみみの祖父じじほうが、かえって都合つごうのよいこともあるものとえます。
『わからない児だの。そちの祖父じじ様や祖母ばば様の御命日でも、精進しょうじんをするではないか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父の考では伯父の介錯を自分がして、自分の介錯を祖父じじに頼むはずであったそうだが、くそんな真似まねが出来るものである。父が過去を語る度に、代助は父をえらいと思うより、不愉快な人間だと思う。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「……関原弥之助。祖父じじ祖母ばばがあなたをお見かけしたら、きっと泣き出してしまったでしょう、兄だと思って」
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
やがてわたくし祖父じじ……わたくしより十ねんほどまえ歿なくなりました祖父じじれてて、わたくし説諭せつゆおおせつけられました。
祖父じじ様は、おつらかったでしょう。口惜しいことが、幾度もあったでしょうね」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父じじ様のおまげもすこし直しましょう」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)