石灰いしばひ)” の例文
それといふのが、時節柄じせつがらあつさのため、可恐おそろしわるやまひ流行はやつて、さきとほつたつじなどといふむらは、から一めん石灰いしばひだらけぢやあるまいか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
の上からまつの枝も見える。石灰いしばひの散つた便所の掃除口さうぢぐちも見える。塵芥箱ごみばこならんだところもある。へんに猫がうろ/\してる。人通ひとゞほりは案外にはげしい。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
近江さんに案内して頂いて自分達はイザル川を横ぎり森の中を雨に濡れながら歩いた。川は石灰いしばひとかした様に真白まつしろな流れがげきして居た。森には種種いろ/\が鮮かに黄ばんで居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かうして調戯からかひながら普請場へ来て皆仕事に掛つたが、職人達は見上みやげるやうな足場へあがり、娘や子供が煉瓦を運ぶ。ミハイロは新参しんまいだからといふので、石灰いしばひに砂を入れてねさせられた。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
そこ、ここに煉瓦れんぐわ石灰いしばひ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やあきたねどぶだ。おそろしい石灰いしばひだ。ひどみちだ。三階さんがいがあるぜ、浴衣ゆかたばかしの土用干どようぼしか、夜具やぐうら眞赤まつかな、なん棧橋さんばし突立つツたつてら。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
煉瓦職人は皆威勢の好い石灰いしばひだらけの若衆わかいしゆ達で、先方さきから言葉を掛けた
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
はしがペンキぬりになつて、黒塀くろべい煉瓦れんぐわかはると、かはづ船蟲ふなむし、そんなものは、不殘のこらず石灰いしばひころされよう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)