痩衰やせおとろ)” の例文
上當年五十三歳に相成候と云たるてい顏色がんしよくことほか痩衰やせおとろにくおちほねあらはれこゑ皺枯しわがれて高くあげず何樣數日手強てづよき拷問に掛りし樣子なり大岡殿此體このてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
肋骨や手足の関節が目立つて目に泌みるその不健康な裸体を見てゐると、まるで痩衰やせおとろへた河鹿かじかが岩にしみついてゐるやうにしか思へないのであつた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
見ると、文治は痩衰やせおとろえてひげぼう/\、葬式とむらい打扮いでたちにて、かみしもこそ着ませぬが、昔に変らぬ黒の紋付、これは流罪中かみへお取上げになっていた衣類でございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今日まで懕々ぶらぶら致候いたしさふらふて、唯々なつかし御方おんかたの事のみ思続おもひつづさふらふては、みづからのはかなき儚き身の上をなげき、胸はいよいよ痛み、目は見苦みぐるし腫起はれあがり候て、今日は昨日きのふより痩衰やせおとろ申候まをしさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と異な声で、破風口から食好みを遊ばすので、十八になるのをれて参りました、一番目の嫁様は来た晩からうめいて、泣煩うて貴方、三月日には痩衰やせおとろえて死んでしまいました。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大岡殿見らるゝに痩衰やせおとろへ眼中ばしりしていじつ亂心らんしんの樣子なれども傳吉始めより申立し梅の人相にんさうに似たるゆゑ如何にも言葉ことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まなこのみいと大くて、病勝やまひがち痩衰やせおとろへたる五体は燈心とうしみの如く、見るだに惨々いたいたしながら、声のあきらかにして張ある、何処いづこよりづるならんと、一たびは目を驚かし、一たびは耳を驚かすてふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
以て願ひますと差出するに駕籠脇かごわきさむらひ請取駕籠の中に差出さしいだせば酒井侯中よりの女の樣子を倩々つく/″\見らるゝに如何にも痩衰やせおとろうれひに沈みし有樣なれば駕籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)