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獰悪
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どうあく
ふりがな文庫
“
獰悪
(
どうあく
)” の例文
旧字:
獰惡
が、遉に
獰悪
(
どうあく
)
らしいこの男も、裁判長の厳かな死刑の云い渡しを受けると、顔の色をサッと
易
(
か
)
えて、頭を低くうなだれました。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
いったい下の
婆
(
ばばあ
)
は何者だろう——
却
(
かえ
)
って茫然とした、あの罪がないような顔が、
獰悪
(
どうあく
)
の
面構
(
つらがまえ
)
よりも意味ありげに思われて、一刻も
居堪
(
いたたま
)
らない。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
魚は
鮪
(
まぐろ
)
にやや似たもので、長さは二間以上もあろう。背ひれは
剣
(
つるぎ
)
のようにとがって、見るから
獰悪
(
どうあく
)
の
相
(
そう
)
をそなえた魚である。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番
獰悪
(
どうあく
)
な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を
捕
(
つかま
)
えて
煮
(
に
)
て食うという話である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二人は幼い頃から習い覚えた経文に依って、女人と云うものが如何に
獰悪
(
どうあく
)
な動物であるかを、よく知って居る筈であった。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
薄暗いランプの光に照し出された彼等の
獰悪
(
どうあく
)
な形相は、さながら地獄の鬼の酒宴を見るようであったに違いありません。
狂女と犬
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
人の弱点を捕えて勝ち誇ったような
驕慢
(
きょうまん
)
な
獰悪
(
どうあく
)
な態度は醜い厭な感じしか傍観している私には与えなかった。
雑記(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
平和な海面なら、綱を持って
対岸
(
たいがん
)
まで泳ぎつくことは、
至難
(
しなん
)
でない、だが
嵐
(
あらし
)
のあとの海は、まだ
獰悪
(
どうあく
)
である。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
そうして彼等の
面
(
つら
)
が、いずれも
獰悪
(
どうあく
)
な色を現わしていることを見て取らないわけにはゆきませんでした。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それに東の廊下にある判官の木像は、青い顔に赤い鬚を
生
(
は
)
やしてあるのでもっとも
獰悪
(
どうあく
)
に見えた。
陸判
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
また、鱷、井中にあるを殺すには、鏡を示して自らその顔の
獰悪
(
どうあく
)
なるに
懼
(
おそ
)
れ死にせしむるほかの手なしと。されど我自ら三千以上の鱷を食いて、少しも害なかったと述ぶ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そして
何時
(
いつ
)
の間にか魂が腐ってしまい、昨夜お春に対して
挙動
(
ふるま
)
ったような邪悪無情な事をするようになった呉羽之介に相当する
獰悪
(
どうあく
)
な表情を絵姿の上に加えたのであります。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
身も心もきっと蠍の様に醜怪な
獰悪
(
どうあく
)
な
奴
(
やつ
)
に違いないとは想像しても、そいつの正体がまるで分らないものだから、目に見える蠍などよりは、
幾層倍
(
いくそうばい
)
も気味悪く恐ろしく感じられた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは
獰悪
(
どうあく
)
に天才的なディレッタンティズムの、堕落した華々しさで人の心をゆすぶり、しびれさせ、責めさいなみ、うっとりとさせ、粉砕する、あの巨大な残忍な創造の一つであった。
道化者
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
葉子に一種の
獰悪
(
どうあく
)
な誇りをもってそれをして、男のためになら何事でもという捨てばちな満足を買い得ないではなかったが、その金がたいてい正井のふところに吸収されてしまうのだと思うと
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
当時遠島を申し渡された罪人は、もちろん重い
科
(
とが
)
を犯したものと認められた人ではあるが、決して盗みをするために、人を殺し火を放ったというような、
獰悪
(
どうあく
)
な人物が多数を占めていたわけではない。
高瀬舟
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
五寸の円の内部に
獰悪
(
どうあく
)
なる夜叉の顔を辛うじて残して、額際から顔の左右を残なく
填
(
うず
)
めて
自然
(
じねん
)
に円の
輪廓
(
りんかく
)
を形ちづくっているのはこの毛髪の蛇、蛇の毛髪である。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
若
(
も
)
しこの婆さんの笑いが毒々しい笑いで、
面付
(
つらつき
)
が
獰悪
(
どうあく
)
であったら私はこの時、
憤怒
(
ふんど
)
して
擲
(
なぐ
)
り
飛
(
とば
)
したかも知れない。いくら怖しいといったって、たかが
老耄
(
おいぼれ
)
た
婆
(
ばばあ
)
でないか。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
殊にその木像が甚だ
獰悪
(
どうあく
)
である上に、周囲には古木うっそうとして昼なお暗いほどであるので、夜は勿論、白昼でもここに入るものは毛髪おのずから立つという物凄い場所であった。
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ほとんど
獰悪
(
どうあく
)
の色が現われてきます。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今迄男の前に立って両腕を組んで、足で折れた鉄砲を蹴やった一番
丈
(
せい
)
の高い
獰悪
(
どうあく
)
な
面構
(
つらがまえ
)
をした眼の怪しく光る黒い洋服を着た男はこの時
頻
(
しきり
)
と気を揉むように
四辺
(
あたり
)
を歩き廻り始めた。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
もしや
瑪哈沁
(
ひょうはしん
)
(この地方でいう
追剥
(
おいは
)
ぎである)ではないかと疑って、草むらに身をひそめて窺うと、一人の軍装をした男が磐石の上に坐って、そのそばには相貌
獰悪
(
どうあく
)
の従卒が数人控えている。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しまいにはシキとは恐ろしい所だと思うまで、いやな顔をたくさん見せられて、また自分の顔をたくさん見られて——長屋から出ている顔はきっと自分らを見ていた。一種
獰悪
(
どうあく
)
な眼つきで見ていた。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今迄と変って
獰悪
(
どうあく
)
げな
面構
(
つらがま
)
えが、
忽
(
たちま
)
ち見違うように柔和となった。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
獰
漢検1級
部首:⽝
17画
悪
常用漢字
小3
部首:⼼
11画
“獰悪”で始まる語句
獰悪派