)” の例文
旧字:
乳母 ま、名譽事めいよごとといの! わしばかりがちゝげたのでかったなら、その智慧ちゑちゝからはひったともひませうずに。
聖天様しょうでんさまには油揚あぶらあげのお饅頭まんじゅうをあげ、大黒様だいこくさまには二股大根ふたまただいこん、お稲荷様いなりさまには油揚をげるのは誰も皆知っている処である。
善吉は注置つぎおきの猪口を飲み乾し、手酌でまた一杯飲み乾し、杯泉でよく洗ッて、「さアげるよ。今日ッきりなんだ。いいかね、器用に受けて下さい」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
一ツはなしてげるのも異なものですから二つともに進じましょう、というのでついに二つともれた。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
政「親方何にも有りませんが、一口げて兄弟同様のよしみを結びとうござりまする」
江の島見物の旅人たちが、なにがしかの賽銭さいせん神楽料かぐらりょうとしてげるたびに、この社家にいる一人の若い巫女みこが、白の綸子りんずの小袖にはかまをつけて、舞楽殿で湯立舞ゆだてまいの一節を舞うのであった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしかね。私は大屋のもんですが、ここの登記役場の書記に出ていやすよ。私も海の口へはまだ引越して来たばかりで。これからは何卒どうかまあ君等にも御心易くしてもらわにゃならん——さ、一杯げやしょう」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御神燈ごしんとうげろ
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「吉里さん、げるよ、献げるよ、私しゃこれでもうたくさんだ。もう思い残すこともないんだ」と、善吉は猪口を出す手がふるえて、眼を含涙うるましている。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
ヂュリ わしの誓言ちかひは、さうはれぬさきに、げてしまうた。もう一げらるゝやうであってしい。
しの「あなた盃を取ってげて下せえな」
ヂュリ かぎりをあらためてげうために。とはいへ、それも、畢竟ひっきゃうは、こひしいからのこと、げたいとおもこゝろうみこひしいとおもこゝろうみの、そのそこはかられぬ。
平田は待ちかねたという風情で、「小万さん、一杯げようじゃアないかね」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)