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猛獸
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まうじう
少年の
指す
方を
眺めると
如何にも
大變!
先刻吾等の
通※して
來た
黄乳樹の
林の
中より、
一頭の
猛獸が
勢鋭く
現はれて
來たのである。
立處其の
手足を
炙るべく、
炎々たる
炭火を
熾して、やがて、
猛獸を
拒ぐ
用意の、
山刀と
斧を
揮つて、あはや、
其胸を
開かむとなしたる
處へ、
神の
御手の
翼を
擴げて、
其膝、
其手、
其肩、
其脛
此遊歩の
間、
武村兵曹の
命ずる
儘に、
始終吾等の
前になり、
後になつて、
豫め
猛獸毒蛇の
危害を
防いで
呉れた、
一頭の
猛犬があつた。
『
此畜類、まだ
往生しないか。』と、
手頃の
鎗を
捻つて
其心臟を
貫くと、
流石の
猛獸も
堪らない、
雷の
如く
唸つて、
背部へドツと
倒れた。