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いと
宗助は
今日迄の
經驗に
訴へて、これ
位微かな
燈火に、
夜を
營なむ
人間を
憶ひ
起す
事が
出來なかつた。
其光は
無論月よりも
強かつた。
且月の
如く
蒼白い
色ではなかつた。
初め村中も
倶々勸めて止ざりけり
偖も寶澤は願ひの如き身となり
旅の
用意もそこ/\に
營なみければ村中より
餞別として百文二百文分に
應じて
贈られしに
塵も
積りて山の
譬へ集りし金は都合八兩貳
歩とぞ成にける其外には
濱村ざしの
風呂敷或は
柳庫裏笈笠蜘の
巣絞の
襦袢など思々の
餞別に支度は十分なれば寶澤は
宗助は
亡兒のために、
小さい
柩を
拵らえて、
人の
眼に
立たない
葬儀を
營なんだ。しかる
後、
又死んだもののために
小さな
位牌を
作つた。
位牌には
黒い
漆で
戒名が
書いてあつた。