淡雪あわゆき)” の例文
小指を掛けてもすぐかえりそうな餌壺は釣鐘つりがねのように静かである。さすがに文鳥は軽いものだ。何だか淡雪あわゆきせいのような気がした。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昼は消える淡雪あわゆき——降っているうちは綺麗で、積るということをしないうちに、いつ消えたともなく消えてしまう、春さきにこの湖の中などへ
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が雲に遮られて、湖水の上がうっすらと、かげろってきました。が、その瞬間に、私には今日まで二日間の疑問が、淡雪あわゆきのように消え去るのを覚えました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
ふとしたかぜが元で、急性肺炎を起し、手をつくした看病も甲斐かいなく、淡雪あわゆきの消える様に果敢はかなくなってしまった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
淡雪あわゆきは水になつた。窓々の扉が開く。頬張ほおばつて朝のパンを食ふ平凡な午前九時が来て太陽はレデー・メードになる。侯爵は立上つて一九三一年の冬に身震ひした。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
娘お登和が盆へせて持来れるは珈琲茶碗こーひーぢゃわんと小さき菓子皿「大原さん、食後のお菓子を一つ召上って御覧なさい。これは林檎りんご淡雪あわゆきです」大原は苦しそうに我腹わがはら
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
垂玉すいぎよく乳房ちぶさただ淡雪あわゆきの如く含むと舌にきえて触るるものなく、すずしきつばのみぞあふれいでたる。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何千坪かの雪の地域には、雑草や根笹の凸凹でこぼこも見えず、きれいに淡雪あわゆきが積っている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あんなに山盛りになっていたサラダも虹鱒のフライも、朝日に逢った淡雪あわゆきのようにどこかへ姿を消してしまった。特大のコッフェルでいたご飯が、ほんの申し訳ほど底に残っただけだった。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お勢の事は思出したばかりで心にも止めず忘れるともなく忘れていたが、今突然可愛らしい眼と眼を看合わせ、しおらしい口元で嫣然にっこり笑われて見ると……淡雪あわゆきの日の眼にッて解けるが如く
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そういう時には先刻さっきお話し申した手軽なプデンだとか淡雪あわゆきだとか、ブラマンジだとかいうお料理にして差上げると病人がよろこんで牛乳料理を食べるようになります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ひよどりも飛んで行つて仕舞しまつた。日のあたたかみで淡雪あわゆきうわつらがつぶやく音を立てながら溶け始めた。侯爵の背中にニンフの浮彫うきぼりが喰ひ込み過ぎた。彼はそこではじめて腰板に腰を下す。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
亭々てい/\たる並松なみまつの梢に淡雪あわゆきの色。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
大原「それから三日目には何です」お登和「三日目は玉子と牛乳の淡雪あわゆきといいまして先ず大きな玉子の白身二つばかり茶筅ちゃせんで泡の沢山立つまでよく掻き廻してそれを ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その外体裁ていさいを変えれば色々の料理が出来ますから少しは御自分で工風くふうして御覧なさいまし。私どもでは日本料理の玉子酢から西洋料理の淡雪あわゆきソースというものを工風致しました。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
玉子たまご牛乳ぎゅうにゅう淡雪あわゆき 春 第七十四 色々の朝食あさめし
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さかな淡雪あわゆきソース 秋 第二百十八 あじ料理
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
玉子たまご淡雪あわゆき 秋 第二百六 玉子の雪
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)