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沈吟
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ちんぎん
ふりがな文庫
“
沈吟
(
ちんぎん
)” の例文
大井は海老茶色の幕へ手をかけたまま、ふらつく足を踏みしめて、しばらく
沈吟
(
ちんぎん
)
していたが、やがて俊助の鼻の先へ酒臭い顔を持って来ると
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
道也先生はしばらく
沈吟
(
ちんぎん
)
していたが、やがて、机の前を立ちながら「そんな事はないよ。そんな馬鹿な事はないよ。徳川政府の時代じゃあるまいし」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この名を墓標に勒するは故人の本意でないかも知れぬので、三山は筆を持って暫らく
沈吟
(
ちんぎん
)
したが、シカモこの名は日本の文学史に永久に朽ちざる輝きである。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
七尺の偉丈夫も、魂を掻きむしられ、
沈吟
(
ちんぎん
)
、去りもやらず、鏡の中に映る彼女のほうを
偸
(
ぬす
)
み見していた。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
江守銀二はそう言って、ライス・カレーの詩でも作りそうに、
斜
(
ななめ
)
に天を仰いで
沈吟
(
ちんぎん
)
しました。
奇談クラブ〔戦後版〕:13 食魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
きょうで三日も
沈吟
(
ちんぎん
)
をつづけ、書いてはしばらくして破り、また書いては
暫
(
しばら
)
くして破り、日本は今、紙類に不足している時ではあるし、こんなに破っては、もったいないと自分でも
作家の像
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
奴の材幹を持ってして、これは何うしたことだろうと
沈吟
(
ちんぎん
)
させられる。時に例外がある。このボンクラがと思っているのが素晴らしい細君に恵まれている。
好妻拙夫
(
こうさいせっぷ
)
という諺が
肯
(
うなず
)
ける。
ロマンスと縁談
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ホーベスはふたたび、戸だなのなかに
禁錮
(
きんこ
)
された。モコウは昼すぎに二、三品、食物を運んでやったが、かれはほとんど一口もふれず、ただ頭をたれてなにごとか深く
沈吟
(
ちんぎん
)
思考している。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
老婦人はしばし
沈吟
(
ちんぎん
)
して、「
可
(
よ
)
し、すぐに
引摺
(
ひきず
)
って来い、連れて帰る。」「いえ、森に居る鳥は、
籠
(
かご
)
の中に居るように手軽くは
押
(
おさ
)
えられませぬ。少し手間が取れますがお待ち遊ばしますか。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わが
暫
(
しばら
)
く立ちて
沈吟
(
ちんぎん
)
せしは
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
宗近君は机の上にあるレオパルジを無意味に取って、
背皮
(
せがわ
)
を
竪
(
たて
)
に、
勾配
(
こうばい
)
のついた
欅
(
けやき
)
の角でとんとんと軽く
敲
(
たた
)
きながら、少し
沈吟
(
ちんぎん
)
の
体
(
てい
)
であったが、やがて
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
平中は
窶
(
やつ
)
れた頬の上に、涙の痕を光らせながら、今更のやうに思ひ惑つた。しかし
少時
(
しばらく
)
沈吟
(
ちんぎん
)
した後、急に眼を輝かせると、今度はかう心の中に一生懸命の叫声を挙げた。
好色
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
冀州城内の獄中に監せられていた田豊は、官渡の大敗を聞いて
沈吟
(
ちんぎん
)
、食もとらなかった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夫人は
瞑目
(
めいもく
)
沈吟
(
ちんぎん
)
して、腕車はいずこを走るやらんしばらくは
現
(
うつつ
)
なり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
再び万年筆を執って、
沈吟
(
ちんぎん
)
しているところへ、妻が上って来た。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ところが先生はしばらく
沈吟
(
ちんぎん
)
したあとで、「どうも君の顔には
見覚
(
みおぼ
)
えがありませんね。人違いじゃないですか」
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
粟野さんは保吉の教科書を前に、火の消えたパイプを
啣
(
くわ
)
えたまま、いつもちょっと
沈吟
(
ちんぎん
)
した。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そういって、孫権がふたたび
沈吟
(
ちんぎん
)
すると、張昭そのほかの重臣は皆、口を揃えて
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうしてその鋭いうちに、
懐旧
(
かいきゅう
)
と云うのか、
沈吟
(
ちんぎん
)
と云うのか、何だか、人を引きつけるなつかしみがあった。この黒い
坑
(
あな
)
の中で、
人気
(
ひとけ
)
はこの坑夫だけで、この坑夫は今や眼だけである。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自然の下には、武蔵も、じっと
沈吟
(
ちんぎん
)
しているしかない。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
帰って見ると主人は書斎の
中
(
うち
)
で何か
沈吟
(
ちんぎん
)
の
体
(
てい
)
で筆を
執
(
と
)
っている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なにか娘のことについて、
沈吟
(
ちんぎん
)
しているようだった。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
脇息
(
きょうそく
)
に倚って、しばらく、
沈吟
(
ちんぎん
)
はしていたが——。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は
沈吟
(
ちんぎん
)
して考えた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いいつけるとそのまま、独り
沈吟
(
ちんぎん
)
していた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“沈吟”の意味
《名詞》
静かに口ずさむこと。
物思いに考え込むこと。
(出典:Wiktionary)
沈
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
吟
常用漢字
中学
部首:⼝
7画
“沈”で始まる語句
沈
沈黙
沈着
沈鬱
沈湎
沈澱
沈淪
沈默
沈香
沈丁花