きよく)” の例文
電氣でんきの一きよく活字くわつじむすけていて、の一きよくかみつうじて、其紙そのかみ活字くわつじうへけさへすれば、すぐ出來できるのだと小六ころくつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
厚顏無耻なのか、無智のきよく罪が無いのかわからないおりかに對しても、とるにも足りないものに向ふ時の、ゆとりのある心持が湧いて來た。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
くらがりの海のものおそろしさも、衰弱のきよくとなれる神経を刺すこと多く、はてはもとの𤍠湯の中に死なずして目をひらうをとなり申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
誠愛誠實を無益のものと思ひ、無暗に人を疑ひ、矢鱈に天を恨み、そのきよくつい精神せいしんやわらぎやぶりておこなふべからざることおこなみづからざるほど惡事あくじ爲遂しとぐることあらば
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
水樽みづだるからになつて鐵車内てつしやない一隅いちぐうよこたはつた。一同いちどう最早もはや絶望ぜつばうきよくたつしたのである。
不可いかん、不可いかん、下劣げれつきよくだ」と先生がたちまにがい顔をした。その云ひ方が如何いかにも下劣らしいので、三四郎と美禰子は一度に笑ひした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゞ事実の報道として読む丈である。自分の取る新聞抔は、死人十何人と題して、一日に変死した人間の年齢、戸籍、死因を六号活字で一行づゝに書く事がある。簡潔明瞭のきよくである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
實は疲勞のきよく聲を出す元氣を失つたのだと知れた。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)