案排あんばい)” の例文
彼は「好い案排あんばいに空模様が直って来ました。これじゃ日がかんかん照るよりかえって結構です。船遊びには持って来いという御天気で」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水車みづぐるま川向かはむかふにあつてそのふるめかしいところ木立こだちしげみになかおほはれて案排あんばい蔦葛つたかづらまとふて具合ぐあひ少年心こどもごころにも面白おもしろ畫題ぐわだい心得こゝろえたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「そして、之こそ、一年の大部分が冬である北国の植物にも、極く短い春と夏の間に大急ぎで花を咲かせ実を結ばせる・あの自然の巧みな案排あんばいの一つなのだ」
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
何だか同じ路を往ったり来たりするような案排あんばいで、あんまり、もどかしものだから、壁へ頭をぶつけて割っちまいたくなった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水車は川向かわむこうにあってその古めかしい処、木立こだちしげみに半ばおおわれている案排あんばい蔦葛つたかずらまとうている具合、少年心こどもごころにも面白い画題と心得ていたのである。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そのあと胸算用むなざんようでもする案排あんばいしきで、指を折って見たり、ただかんがえたりしていたが、やがてまた綺麗きれいな指で例の文銭を新らしく並べえた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「しかし今日は好い案排あんばいに暖かいね。母上おっかさんでも今日は大丈夫だろう」と両手を伸して大欠伸おおあくびをして
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「好い案排あんばいね、風が無くなって。昼間のように吹かれると、家に坐っていても何だか気味が悪くってしようがないわ」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
案排あんばいね、かぜくなつて。晝間ひるまやうかれると、うちすわつてゐてもなんだか氣味きみわるくつて仕樣しやうがないわ」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
根治は覚束おぼつかないと宣告されたので、平岡も驚ろいて、出来るだけ養生に手を尽した所為せいか、一年ばかりするうちに、案排あんばいに、元気がめっきりよくなった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ車夫ていの男が一人縁側に腰を懸けて烟草をんでいた。聞いてみると、先刻さっき一返御出おいでになりましたが、この案排あんばいじゃ、どうせ午過ひるすぎだろうって又御帰りになりましたという答である。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてこの取捨は我々の注意(故意もしくは自然の)に伴って決せられるのでありますから、この注意の向き案排あんばいもしくは向け具合がすなわち態度であると申しても差支さしつかえなかろうと思います。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
案排あんばいに、元気が滅切めつきりよくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自分は「いい案排あんばいでした」と答えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)