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りよてん
旅店の
若い
衆も
押返すやうにお
留め
申しては
居りますが、
手足を
掉つてお
肯入れなく、
靴で
蹴飛ばしていらツしやいます。
快く
頷いて、
北陸地方を
行脚の
節はいつでも
杖を
休める
香取屋といふのがある、
旧は
一軒の
旅店であつたが、
一人女の
評判なのがなくなつてからは
看板を
外した
実際なら
奇蹟であるから、
念のためと、こゝで、
其の
翌日旅店の
主人に
聞いたのが、……
件の
青石に
薄紫の
筋の
入つた、
恰も
二人が
敷いた
座蒲団に
肖て
居ると
言ふ
其であつた。
苫を
且つ
覆うて、
薄の
穗も
靡きつゝ、
旅店の
午は
靜に、
蝉も
鳴かない。