斎戒沐浴さいかいもくよく)” の例文
「どうか、こよいは悠々身心をおやすめ遊ばして、明日は斎戒沐浴さいかいもくよくをなし、万乗の御位みくらいを譲り受け給わらんことを」と、いのって去った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斎戒沐浴さいかいもくよくをするというほどではなくとも身と心とを清浄にして早春の気持よい吉日を選んでその日から彫り初めました。
やがて斎戒沐浴さいかいもくよくしてあらたに化粧をらした黛夫人が、香煙縷々るるたるうちに、白衣を纏うて寝台の上に横たわったのを、呉青秀が乗りかかって絞め殺す。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もとより肉体にくたいはないのですから、現世げんせるような、斎戒沐浴さいかいもくよくいたしませぬ。ただ斎戒沐浴さいかいもくよくをしたと同一どういつきよらかな気持きもちになればよいのでございまして……。
少し離れて建っている斎戒沐浴さいかいもくよくのため使ったという浴堂のまわりに木の葉が佗しく掃き積っていた。
褐色の求道 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これは文学の神様のものだから襟を正して読め、これは文学の神様を祀っている神主の斎戒沐浴さいかいもくよく小説だからせめてその真面目さを買って読め、と言われても、私は困るのである。
可能性の文学 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
斎戒沐浴さいかいもくよくして、おくわ入れの儀式と称し、対馬守が自身で第一の鍬を振りおろす。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しゅうとめに孝行で、その夫が外へ往っていて、姑が重い病気にかかり、医巫いふも効がないので、斎戒沐浴さいかいもくよくして天に祈り、願わくば身をもって代りたいといって、ももを割いて進めたから、病気が癒った、で
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
極意だの免許皆伝などというのは茶とか活花いけばなとか忍術とか剣術の話かと思っていたら、関孝和せきたかかずの算術などでも斎戒沐浴さいかいもくよくして血判をし自分の子供と二人の弟子以外には伝えないなどとやっている。
デカダン文学論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
孔明は前日から斎戒沐浴さいかいもくよくして身をきよめ、身には白の道服を着、素足のまま壇へのぼって、いよいよ三日三夜の祈りにかかるべく立った。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにより肝要だいじなのは斎戒沐浴さいかいもくよく……つまり心身しんしんきよめる仕事しごとでございます。もちろんわたくしどもには肉体にくたいはないのでございますから、人間にんげんのように実地じっちみずなどをかぶりはいたしませぬ。
神思幾日、彼は一夜、斎戒沐浴さいかいもくよくの後、燭をかかげて、後主劉禅りゅうぜんのぼす文を書いていた。後に有名な前出師ぜんすいしひょうは実にこのときに成ったものである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、わたくしほうでもそれに調子ちょうしわせて生活せいかつするようにいたし、丁度ちょうど現世げんせ人達ひとたちあさきて洗面せんめんをすませ、神様かみさま礼拝らいはいするとおなじように、わたくしあさになれば斎戒沐浴さいかいもくよくして、天照大御神様あまてらすおおみかみさまをはじめたてまつ
前の夜から報らせがあったので、孔明は斎戒沐浴さいかいもくよくして、はや身支度をととのえていた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わがおやかた多聞兵衛たもんびょうえ殿へは、その忠誠にめでて、内見ないけんをゆるされ、今朝、秋ノ坊の別当とお館とただお二人ぎりで、斎戒沐浴さいかいもくよくのうえ、上宮太子の御霊屋みたまやにて、そっと拝覧を給わったものだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それも、お使者ご一名のみ。……斎戒沐浴さいかいもくよくをとげた上ならでは」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)