すえ)” の例文
「時間器械の部屋の中というと、あの焼跡の地下室にすえけてある、あれのことだね。君が僕にはいれといったあの器械の中のことだね」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
湯は、だだっ広い、薄暗い台所の板敷を抜けて、土間へ出て、庇間ひあわい一跨ひとまたぎ、すえ風呂をこの空地くうちから焚くので、雨の降る日は難儀そうな。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
次郎は母親にいいつけられて、まきを割り、掛樋かけひを掛けて、野天に出ているすえ風呂をわかしています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
店さきの諸所に、小切れをいれた箱がすえてあった。あたしの祖母は連合つれあいが呉服の御用商人であり、兄がやはり絹呉服の御用商であった関係か、大丸とはゆかりがありげであった。
極めて清潔なると器具配置の整頓せいとんせると立働たちはたらきの便利なるとねずみ竄入ざんにゅうせざると全体の衛生的なるとはこの台所の特長なり。口画をひらく者は土間の中央に一大ストーブのすえられたるを見ん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そこに、繩を巻き取る、大きな車の様な道具がすえつけてある。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つい眼の前には板戸のごとき大肉俎おおまないたすえられしに、こうし大の犬の死体四足しそくを縮めてよこたわれるを、いまだ全く裂尽さけつくさで、切開きたる脇腹より五臓六腑溢出あふれいで、血は一面に四辺あたりを染めたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たかすえを八人の鷹匠にすえさせ、供の近習も多くは騎馬で、愛智川えちがわの近くまで遠乗りをかねて出かけた。信長の好きは、騎馬、角力、放鷹ほうよう、茶道といわれているくらい、狩猟かりは趣味のひとつだった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中央の畳に緋毛氈ひもうせんを敷き、古風なかねの丸鏡の鏡台がすえてあった。
ある晩私は背戸せどすえ風呂から上って、椽側えんがわを通って、わきの茶の間に居ると、台所を片着かたづけた女中が一寸ちょいとうちまでってくれと云って、挨拶をして出て行く、と入違いれちがいに家内は湯殿に行ったが
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)