挟箱はさみばこ)” の例文
旧字:挾箱
挟箱はさみばこ一人、続いて侍女二人、すぐ駕になって、駕脇に、四人の女、後ろに胡床こしょう、草履取り、小者、広敷番、侍女数人——と、つづいて来た。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
一人の雲助は銭の一さしを口にくはへてその内の幾らかを両手にわけて勘定してをる。その傍に挟箱はさみばこを下ろして煙草を吹かしてをる者もある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
歩むともなく佇むともなく立っていると、その後ろには、挟箱はさみばこがおともをしているといったような尋常一様の御祝儀のお供ぞろいみたようなものです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「大変立派なお支度よ。何でもね、箪笥が四棹よさおくンですって。それからね、まだ長持だの、挟箱はさみばこだの……」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
残ったのは、虫の食った挟箱はさみばこや、手文庫、軸の曲った燭台しょくだい、古風な長提灯ながちょうちん、色のせたかみしもといったような、いかにもがらくたという感じのするものばかりであった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そう云う場合にいつも兵具をたずさえて、物々しい様子をしていたので、附き従う者共も具足やかぶとなどを密かに挟箱はさみばこに入れて持ち歩き、あたかも戦場におもむく軍隊のような感があった。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
黒棚くろだな御廚子みずし三棚みつだなうずたかきは、われら町家ちょうか雛壇ひなだんには打上うちあがり過ぎるであろう。箪笥たんす長持ながもち挟箱はさみばこ金高蒔絵きんたかまきえ銀金具ぎんかなぐ。小指ぐらいな抽斗ひきだしを開けると、中があかいのも美しい。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「……あの……黒い塗駕籠ぬりかごの中に紫色の被布ひふを召して、水晶のお珠数じゅずを巻いた手であの花をお渡しになりました。挟箱はさみばこ持った人と、怖い顔のお侍様が一人おともしておりました」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
芸者の揃いの手古舞てこまい姿。佃島つくだじま漁夫りょうし雲龍うんりゅう半纏はんてん黒股引くろももひき、古式のいなせな姿で金棒かなぼうき佃節を唄いながら練ってくる。挟箱はさみばこかついだ鬢発奴びんはつやっこ梵天帯ぼんてんおび花笠はながさ麻上下あさがみしも、馬に乗った法師武者ほうしむしゃ
父の伝左衛門でんざえもんは、家主になった最初の新年とて、町内を回礼せねばならなかったが、従者を雇う銭がなく、それが為めに京伝は挟箱はさみばこを肩にして父の後に従い、弟はまたその後について
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
挟箱はさみばこ、鳥毛のやり、武鑑を繰るまでもなく、丸鍔まるつばの定紋で青山因幡守様あおやまいなばのかみさまと知れる。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
挟箱はさみばこや鳥毛のやりを押し立てて舞踊しながら練り歩く百年前の姿をした「サムライ日本」の行進のために「モダーン日本」の自由主義を代表する自動車の流れがき留められてしまったのである。
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もう一人は挟箱はさみばこに酒樽をつけて後につづく同行二人……あれはと盲人にたずねると、その盲人、前と同じく耳を傾けながら、同行二人連れでござるが一人は女、一人は男……と言う。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長持や挟箱はさみばこの話になっちゃ大事去った、と後悔しても最う追付おッつかない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
木刀を一本差して、南部家中の小者らしく、挟箱はさみばこを肩にしていた。
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
挟箱はさみばこ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
挟箱はさみばこだと思うと違います
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)