“拭(ふき)” の例文
拭(ふき)つゝ咄(はな)しかくれば長庵は態(わざ)と目を拭(ぬぐ)ひ涙に聲を曇(くも)らせて貧(ひん)の病は是非もなし世の成行(なりゆき)と斷念(あきら)めよ我とては貯(たくは)へ金は有ざれども融通(ゆうづう)さへ成事なら用立(ようだつ)て遣度(やりたし)と手紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
次が臺所(だいどころ)で、水瓶(みづがめ)でも手桶(てをけ)でも金盥(かなだらい)でも何でも好く使込むであツて、板の間にしろ竈(かまど)にしろ釜(かま)にしろお飯櫃(はち)にしろ、都て拭(ふき)つやが出てテラ/\光ツてゐた。雖然外は汚(きた)ない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
奇麗だねあの娘(こ)はと鼻を拭(ふき)つつ言へば、大巻さんより猶(なほ)美(い)いや、だけれどあの子も華魁(おいらん)に成るのでは可憐(かわい)さうだと下を向ひて正太の答ふるに、好いじやあ無いか華魁になれば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
朝の拭(ふき)掃除がすんで了(しま)うと、その仲間に加わって、時のたつのを知らずに話に耽(ふけ)っていたお島は、新建(しんだち)の奥座敷で、昨夜(ゆうべ)も悪好(わるず)きな花に夜を更(ふか)していた主婦の、起きて出て来る姿をみると
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
持って生れた倫理上の不潔癖と金銭上の不潔癖の償いにでもなるように、座敷や縁側の塵(ちり)を気にした。彼は尻(しり)をからげて、拭(ふき)掃除をした。跣足(はだし)で庭へ出て要(い)らざる所まで掃いたり水を打ったりした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お拭(ふき)なさいよ。なんだか
奇麗(きれい)だね彼(あ)の娘(こ)はと鼻(はな)を拭(ふき)つゝ言(い)へば、大卷(おほまき)さんより猶(なほ)美(い)いや、だけれど彼(あ)の子(こ)も華魁(おいらん)に成(な)るのでは可憐(かわい)さうだと下(した)を向(む)ひて正太(しようた)の答(こた)ふるに、好(い)いじやあ無(な)いか華魁(おいらん)になれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)