折鞄をりかばん)” の例文
昨夕ゆうべ折鞄をりかばんまた丁寧ていねいわきけて、ゆつくり卷烟草まきたばこかしながら、宗助そうすけふことを、はあ/\といてゐたが、どれ拜見はいけんいたしませうと御米およねはうなほつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私が折鞄をりかばんを下げて、マリオの停車場に下りたのは、丁度いまごろ、灯がやっとついた所でしたが、ホテルへ着いて見ると、この暑いのに、窓がすっかり閉めてあるのです。
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
おどろいたことには、とらのやうに大切たいせつにしてゐるウェルスの手紙てがみなどれた折鞄をりかばんのなかから、黒髪くろかみたば短刀たんたうとが、かみにくるんで、ひもいはへられたまゝ、竹村たけむらまへ引出ひきだされたことであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
両手りやうて洋杖ステッキ折鞄をりかばん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ちひさい折鞄をりかばんわきけて、落付おちつはらつた態度たいどで、慢性病まんせいびやう患者くわんじやでもあつかやうゆつくりした診察しんさつをした。そのせまらない顏色かほいろはたてゐた所爲せゐか、わく/\した宗助そうすけむねやうやをさまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)