手配てくばり)” の例文
署長は、もう追っかけても駄目だと悟ると、猶予なく伯爵家の電話を借りて、その旨を本署に伝え、彦太郎逮捕の手配てくばりを命じた。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが氏郷の手配てくばりは行届いて居て、の三隊の後備は三段に備を立てて、静かなること林の如く、厳然として待設けて居た。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
目附中川、犬塚の手で陰謀の与党を逮捕しようと云ふ手配てくばりは、日暮頃から始まつたが、はか/″\しい働きも出来なかつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
よびて其方は天一坊召捕方めしとりかた手配てくばりを致べしと仰付られ池田大助には天一坊召取方めしとりかたを申付らる是によつて三五郎は以前の如く江戸出口十三ヶ所へ人數にんず
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この行列は、監物けんもつの日頃不意に備える手配てくばりが、行きとどいていた証拠として、当時のほめ物になったそうである。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人の手配てくばりに抜かりなく、ことにその手利てききの一人として机竜之助を頼んでおいた。明日になれば、首のない近藤勇の死骸を、島原界隈かいわいで見つけることができる。
此の亭主は石河伴作いしかわばんさくと云う旦那しゅの手先で、森田の金太郎と云う捕者の上手、かねて網を張って待っていた処だから、それは丁度いと、それ/″\手配てくばりをしたが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも、轉任の命令がくだると、一週間以内に出立する内規だつたから、直ぐにそれぞれ手配てくばりをした。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
引込むなど左様な大胆な事は出来ませんサア既にこうまで手配てくばりが附て居れば旦那が外から戸を叩く
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
いずれはかかることをしでかすやつとにらんで、とうからそれとなく見張っておったに……早く手配てくばりをして引っくくってしまわなかったのが、返すがえすもわしの落ち度であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
将門にひ立てられた官人連は都へ上る、諸国よりはくしの歯をひくが如く注進がある。京師では驚愕きやうがくと憂慮と、応変の処置の手配てくばりとに沸立わきたつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
東町奉行所で小泉を殺し、瀬田を取り逃がした所へ、堀が部下の与力よりき同心どうしんを随へて来た。跡部あとべは堀と相談して、あけ六つどきにやう/\三箇条の手配てくばりをした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
引寄ひきよせ十分に食終くひをはり夫より悠然いう/\と幸手宿へ立歸り此由を三五郎にはなし密かにしめし合せ彼等の子分が金兵衞のかたきねらひ來る時は斯樣々々かやう/\手配てくばりを成して用心堅固けんごに居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
多勢おおぜい寄集り、明日あす手配てくばりをして居るうちに夜が明けると、眞葛周玄の調合で毒酒をこしらえ、これと良い酒とを用意して、粥河を始め千島禮三、眞葛周玄までも、実に青菜に塩というような
手配てくばりが済んで、坂本は役宅やくたくに帰つた。そして火事装束くわじしやうぞく草鞋掛わらぢがけで、十文目筒じふもんめづゝを持つて土橋どばしへ出向いた。蒲生がまふと同心三十人とは揃つてゐた。本多はまだ来てゐない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ぞ懸たりける此間このまに常樂院藤井左京諏訪右門等各々召捕れ其餘一人も殘ず召捕たり越前守は豫て手配てくばりせし事なれば急ぎ八山へ捕方とりかたを遣はせしに山内伊賀亮は早くも覺悟かくごし自分の部屋へやへ火を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)