手並てなみ)” の例文
しかし、それは決して人の好いものではない。彼女はピアノをいた。その手並てなみは鮮かだつた。彼女は歌つた。その聲は立派だつた。
即ち花生はないけに椿の花を生けようとする場合に、手並てなみが上手でないために、椿の花が正面を向かずに向うを向いたというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
七兵衛は米友に向って、なおくわしくがんりきの人相や悪事の手並てなみを語って、それに多くの敵意と注意を吹き込んでおきました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんどもこうしてやまへはいれば、きつねか、おおかみか、おおぐまをしとめて、土産みやげにするから、どうかわたし手並てなみていてもらいたいものだ。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
秀吉公ひでよしこう威勢いせいをもおそれず、都へりこんでくるとは、不敵ふてきなやつ。この呂宋兵衛の手並てなみにもこりず、わざわざ富士ふじ裾野すそのから討たれにきたか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
クララ夫人のピアノの手並てなみと、その聡明さについては、文献を通して、我らはかなり彷彿ほうふつすることが出来るのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
伊豆を旅してむしろ眼に入るのは路傍に立つ石像などではないでしょうか。伊豆は石の国ともいえましょう。無名の石工は時折驚くべき手並てなみを見せます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
二郎青年もベッドに這入ったが、なかなか睡気ねむけを催さぬ。ほかの人々は安心しても、彼丈けは怪物の神変不思議な手並てなみを、まざまざと見せつけられていたからだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この大騷動だいさうどうのちは、猛獸まうじう我等われら手並てなみおそれてか、容易ようゐちかづかない、それでも此處こゝ立去たちさるではなく、四五間しごけんへだてゝ遠卷とほまき鐵檻てつおりくるま取圍とりまきつゝ、猛然まうぜんえてる。
頂きはしばしば四つのふさで飾られてある。糸かがりが面白いのみか、笠の裏側がまた美しい。色々な布で色々な形の裏をつける。皆綿入わたいれで裁縫の手並てなみをここでも見せる。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
如何様いかよう手並てなみを彼が現わすかということが玄人くろうと仲間の研究物けんきゅうものであったということと、もう一つは、机竜之助は甲源一刀流から出でて別に一派を開かんとする野心がある
机竜之助は久しぶりで心地ここちよい見物をしたと、その瞬間には今朝よりの不愉快なこともすっかり忘れ去って、少年の手並てなみあざやかなのに感心をすると共に、自分はいかに
弓の道具類も仕事のよさをいまだに失っておりません。紙縒細工かみよりざいくの矢筒、革細工の弓懸ゆがけなど見事な手並てなみを見せます。幾許いくばくかの人が良い仕事を愛すると見えます。この細工を「長門細工ながとざいく」と呼びます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
伊賀の上野の鍵屋かぎやつじというのは、かの荒木又右衛門が手並てなみを現わした敵打かたきうちの名所。