トップ
>
戦々兢々
>
せんせんきょうきょう
ふりがな文庫
“
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)” の例文
それは榎本君からかねて言い聞かされているので、わたしは
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として老人の眼色をうかがっていたが、それでも時々に叱られた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし一方の傅士仁たるや、このところ
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
たるものがあった。
壕
(
ほり
)
を深め城門を閉じ、物見を放って鋭敏になっていた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると余の
傍
(
そば
)
に立っていた是公が何と思ったものか、急にどうだ、あの樹を見ろ、
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
としているじゃないかと云った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
石や瓦の雨どころか、血の雨が降るかもしれないというので、この数日、付近は
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
としている。そんなはなしだった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そしてその後に神の国の常夏は来るのだ。これが神の
経綸
(
けいりん
)
における物ごとの自然的順序だ。何も
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
とすることはない。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
▼ もっと見る
うかうかした事をしたらば大変な事が起りはすまいかというような疑いを
懐
(
いだ
)
いて、実に
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として居る者があるんです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
いずれも
田舎侍
(
いなかざむらい
)
で、西洋料理などは見たことのない連中のみで、中には
作法
(
さほう
)
を知らぬゆえ、いかなるご
無礼
(
ぶれい
)
をせぬとも限らぬと、
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
とし
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
実際はその享楽家的な
外貌
(
がいぼう
)
の下に
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として
薄氷
(
はくひょう
)
を
履
(
ふ
)
むような思いの潜んでいることを、俺は確かに見抜いたのだ。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それはまあ未亡人や義兄の顔を立てるためもあったとして、あの見合いの席での、
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
とした、いじけた気持は、どうしたと云うのであろう。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ただ、番頭たちは
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として被圧的におそれているのだが、米友のは、小うるさいから会いたくねえという
癇癪
(
かんしゃく
)
の一種に過ぎないだけの相違です。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ただ楽屋に控えている翁の耳と眼ばかりを恐れて
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として一番一曲をつとめ終り、翁の前に礼拝してタッタ一言「おお御苦労……」の挨拶を聞くまでは
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
それだけに、一般の庶民はもちろん、殿上人の中にも山王の祟りを恐れて、
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
とする者が多かった。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
われは心
窃
(
ひそか
)
に
赤痢
(
せきり
)
に感染せしなるべしと思ひ付くや人の話にてこの病の苦しさを知り心は
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
たり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「H・S会社」は
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
としていた。社員も職工も仕事が手につかなかった。——それは三田銀行が日本の一流銀行である金菱銀行に合同されることから起った。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「隙見のトム」をきどりつつ、が、その場合にかぎりおもしろいなどという余裕のある気持でなく、むしろ機械的に、心中は
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
と、その堺い目に吸いついてしまった。
放浪作家の冒険
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
ただ過失らしいことが一つあるだけでも世間はやかましく批難するだろうと
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
としていた青年の私でも、やはり恋愛をあさる男のように言われて悪く思われたものなのだ。
源氏物語:32 梅が枝
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ほとんど
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
たる態度で私たちに望むから、どうしたのかと思っていると、やがて、出し抜けに、日露戦争に勝ってくれてまことに有難いという。それにはすっかり恐縮して
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
予は万々
然
(
さ
)
ることのあるべからざる理をもて説諭すれども、
渠
(
かれ
)
は常に
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として
楽
(
たのし
)
まざりしを、
密
(
ひそ
)
かに
持余
(
もてあま
)
せしが、今
眼前
(
まのあたり
)
一本杉の五寸釘を見るに及びて予は
思
(
おもい
)
半
(
なか
)
ばに過ぎたり。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「しかし天物を
暴殄
(
ぼうてん
)
して、
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
しているのも生き甲斐のない話だろう?」
秀才養子鑑
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
世界気の毒な政治家多しといえども、琉球の政治家ほど気の毒な政治家はいないだろうと存じます。
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として薄氷を踏むが
如
(
ごと
)
しという語は能く琉球政治家の心事を形容する事が出来ます。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
あなたも御承知の通り、議会は非常な騒動で、議員達も
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
と云う有様でした。誰れがその連判状をもっているかは、少しも解りません。とにかく連判状があると云う事だけは確かでした。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
甚だ
曖昧
(
あいまい
)
で、質問という声が出ないかと
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
としていたのである。
可能性の文学
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
彼は
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として馳け違いながら立ち働く兵士たちの間から、暇ある度に卑弥呼の部屋へ戻って来た。彼は彼女に迫って訴えた。しかし、卑弥呼の手には絶えず抜かれた一本の
剣
(
つるぎ
)
が握られていた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として迫害を怖れていた者が勇ましく乗り出してくるという、非常に目覚しい事実が起こってくる。それは皆復活の信仰を得た結果なんです。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
武蔵
(
たけぞう
)
が復讐に来るだろうという噂で、お杉ばばも家族も、
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として門を閉じ、出入り口にも鹿垣を作った。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それはあるいは、私の
頻繁
(
ひんぱん
)
過ぎる要求に絶えず
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
としている結果、かえってそんな風になるのかも知れない。———私は実利一点張りで、情味がないのだそうである。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
また民衆もその絶えまなき動流の土に耕し、その
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
たるもとに子を生み、流亡も離合も苦楽もまたすべての生計も、
土蜂
(
つちばち
)
の如く戦禍のうちに営んできた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうなることか」と、
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
たる人心の不安は去りきれなかった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戦
常用漢字
小4
部首:⼽
13画
々
3画
兢
漢検1級
部首:⼉
14画
々
3画
“戦々”で始まる語句
戦々恟々
戦々