懊惱あうなう)” の例文
新字:懊悩
懊惱あうなう困憊こんぱいうちかたむいた。障子しやうじうつときかげ次第しだいとほくへ退くにつれて、てら空氣くうきゆかしたからした。かぜあさからえだかなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いまう、さつきから荷車にぐるまたゞすべつてあるいて、すこしも轣轆れきろくおときこえなかつたことも念頭ねんとうかないで、はや懊惱あうなうあらながさうと、一直線いつちよくせんに、夜明よあけもないとかんがへたから
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ごくからかへつて見ると石がない、雲飛うんぴは妻をのゝしち、いかりいかり、くるひにくるひ、つひ自殺じさつしようとして何度なんど妻子さいし發見はつけんされては自殺することも出來できず、懊惱あうなう煩悶はんもんして居ると、一夜
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
事情が事情だつたので自殺だといふ噂も立ちましたが、事實はひどい懊惱あうなうと貧苦のために、癆症らうしやうが重くなり『歸つた夫』を迎へて、もう一度以前の平和な生活を樂しむことも出來なかつたのです。
かう云ふ懊惱あうなうが富之助を痩せさせる間に、三日經ち五日經つた。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)