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慰撫
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いぶ
ふりがな文庫
“
慰撫
(
いぶ
)” の例文
七十郎らを罰すべし、という空気は圧倒的で、それは兵部宗勝の思う壺であったが、甲斐だけはそれを
慰撫
(
いぶ
)
し、押えることに努めた。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼の
慰撫
(
いぶ
)
はねんごろであった。その温情に遭うとまた、二人の客臣はよけいに涙にくれた。半兵衛はその
体
(
てい
)
を見ているに忍びなかった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は彼でそれを利用するよりほかに仕方がなかった。彼はすぐ「
慰撫
(
いぶ
)
」の二字を思い出した。「慰撫に限る。女は慰撫さえすればどうにかなる」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
妙齢
(
みょうれい
)
の婦女子の
懺悔
(
ざんげ
)
を聴き病気見舞と称する
慰撫
(
いぶ
)
をこころみて、心中ひそかに怪しげなる情念に酔いしれるのを喜んだ。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
数か月にわたる議論と
懇願
(
こんがん
)
と、
叱責
(
しっせき
)
と
慰撫
(
いぶ
)
とが続いた後、父親もとうとうわが子の熱心に動かされずにはいなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
▼ もっと見る
この間に立って調停する
楫取役
(
かじとりやく
)
を勤めたのは池辺三山であって、三山は力を尽して二葉亭を百方
慰撫
(
いぶ
)
するに努めた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
眼つきや身振りや清朗な魂の無音の接触によって、自分のまわりに
慰撫
(
いぶ
)
的な空気を光被してる人たちが世にはある。クリストフは生命の気を光被していた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
故障続出して、心痛常に絶ゆることなかりし、かかる
有様
(
ありさま
)
なれば残余の人夫に対しては、あるいは
呵責
(
かせき
)
し、あるいは
慰撫
(
いぶ
)
し、
随
(
したがっ
)
て勢い賃金を増すにあらざれば
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
だが、ナポレオンはヨーロッパの平和克復の使命を
楯
(
たて
)
にとって応じなかった。デクレスは最後に席を
蹴
(
け
)
って立ち上ると、
慰撫
(
いぶ
)
する傍のネー将軍に向って云った。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
林田もさすがにはつきりした事はいいかねて、何やら口の中でしきりに云いながらさだ子を
慰撫
(
いぶ
)
していた。
殺人鬼
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
それにつけても葉子の
慰撫
(
いぶ
)
をことさらにあこがれていたらしい様子は、そんな事については
一言
(
ひとこと
)
もいわないが、岡の顔にははっきりと描かれているようだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
フランスでも
癒
(
いや
)
されない恋の痛手を、
慰撫
(
いぶ
)
してくれる女を、
東海姫氏国
(
とうかいきしこく
)
に探ねて来たのだと噂された。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
昨日まで
朋輩
(
ほうばい
)
呼ばわりをしていたような諸卿の
慰撫
(
いぶ
)
が、
激昂
(
げっこう
)
した彼らの耳にはいろうわけは無かった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
貞之助は、却って自分が妻を
慰撫
(
いぶ
)
する側に立たされたせいもあって、そんな風に云うのであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして、彼は心を
慰撫
(
いぶ
)
するやうな草原の靜寂を求めて、草原を散歩する樣子もなかつた——草原が與へる無限の平和な歡喜を求めたり、味はつたりすることもなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
おおいに事の
捗取
(
ちょくしゅ
)
となるべけれども、この事ほとんどあるべしとも思われず、一時人心を
慰撫
(
いぶ
)
せんがために与えたまえるがごときは、他日また奪回したまうことあるべければ
民選議院の時未だ到らざるの論
(新字新仮名)
/
神田孝平
(著)
同時に、一方この時代の少年を
慰撫
(
いぶ
)
する芸術をも必要なりとするのである。
子供は虐待に黙従す
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
世間への
体裁
(
ていさい
)
からばかりでなく、実際に、六十の坂を越してから、なお、働き続けねばならない自分の親を、彼は心の底から気の毒に思って、出来るだけの
慰撫
(
いぶ
)
を心掛けているのであったが
山茶花
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
と窪田は
慰撫
(
いぶ
)
的に言った。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
だからそれ以後、尊氏の胸をおびた者が、どんな
慰撫
(
いぶ
)
をこもごも持って行っても「なにが和談だ!」と、あたまから受けつけもしないのだった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
変であって見ればどうかしなければならん。どうするったって仕方がない、やはり医者の薬でも飲んで
肝癪
(
かんしゃく
)
の
源
(
みなもと
)
に
賄賂
(
わいろ
)
でも使って
慰撫
(
いぶ
)
するよりほかに道はない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜の
蒼白
(
あおじろ
)
いぼんやりした明るみの中に、
樅
(
もみ
)
の重い黒い枝が幽鬼のように揺らめくのが、窓の前に見えていた。そしてアントアネットの笑い声は、彼にとっては一つの
慰撫
(
いぶ
)
であった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
わけて十兵衛光秀は、
慰撫
(
いぶ
)
の使いとして、これへ参り、おれには美言を以てなぐさめていたが、君前へもどったら、どう復命しておるやら知れぬ。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
畢竟
(
ひっきょう
)
女は
慰撫
(
いぶ
)
しやすいものである」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも、一夏から秋までは、各村の庄屋や年寄の
慰撫
(
いぶ
)
で、渋々ながら、課せられた人員は仕事に出た。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
慰撫
(
いぶ
)
に努めておりますが、願わくば我君よりも、一度おことばを下し置かれれば、彼等父子も一層誠忠をふるって、ご西下の日をお待ちするであろうと存ぜられますが
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もう幾日かの
辛抱
(
しんぼう
)
だ。ここでこの城を捨てては一年の籠城も諸士の働きもまったくの水泡に帰してしまう。——たのむ、といわぬばかりに、三老臣は、
慰撫
(
いぶ
)
に
努
(
つと
)
めた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その不平を
慰撫
(
いぶ
)
し、その欲するものを与え、その誇るものを
煽賞
(
せんしょう
)
し、一時、虫をこらえて、礼を厚うしてお迎えあらば、彼らはかならず来って丞相の
麾下
(
きか
)
に合流しましょう。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
加うるに、その一族や部将は、ひとたび村重が信長の
慰撫
(
いぶ
)
に従って旗を
捲
(
ま
)
こうとしたのを
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
結局、知事は、武松をふたたび召し入れて、
慰撫
(
いぶ
)
に
努
(
つと
)
めた。もちろん、武松は不平である。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よろしく
慰撫
(
いぶ
)
の沙汰を降し給うて、彼らの罪を
赦
(
ゆる
)
され、彼らの不平をして、逆に世のための意義ある仕事に役立たしめるよう、ここに皇徳の無辺をお示しあらば、元来が単純一片の
草莽
(
そうもう
)
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おそらく、彼はなお、都へやった長文の自己弁解の上申が、忠平父子にとりあげられて——やがて朝廷から
慰撫
(
いぶ
)
の使いでも来るものと、ひそかにそんな期待でもしていたのではあるまいか。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「では、安土から
慰撫
(
いぶ
)
の使者が参れば、伊丹城は、事なく
鎮
(
しず
)
まろうか」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが秀吉としても、精いっぱいの
慰撫
(
いぶ
)
であった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、どっちつかずに、双方を
慰撫
(
いぶ
)
した。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“慰撫”の意味
《名詞》
なだめ、安心させること。慰め、いたわること。
(出典:Wiktionary)
慰
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
撫
漢検準1級
部首:⼿
15画
“慰撫”で始まる語句
慰撫的