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慄
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ぞっ
ふりがな文庫
“
慄
(
ぞっ
)” の例文
さすが豪胆のルパンも全身冷水を浴びた様に
慄
(
ぞっ
)
とした。この物凄い、無気味な墓場の底から出て来る悲鳴は、果して何んだろうか?
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
私は
慄
(
ぞっ
)
と悪寒を感じるのだ、私に忍術の心得があったら、こんな場合、ドロンといって消滅してしまうところなのだが、松之助でないから駄目だ。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
そうしてまた
慄
(
ぞっ
)
としたのです。私もKの歩いた
路
(
みち
)
を、Kと同じように
辿
(
たど
)
っているのだという
予覚
(
よかく
)
が、折々風のように私の胸を
横過
(
よこぎ
)
り始めたからです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
所が、その椅子にかけて、緩く廻って居りますうちに、いきなり私の身体が
慄
(
ぞっ
)
と凍り付いて、頭の
頂辺
(
てっぺん
)
にまで、動悸がガンガンと鳴り響いて参りました
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「あの木は村の鬼門に
植
(
うわ
)
っている木で昔からある木でげす……。」と按摩は言った。私は何んだか
慄
(
ぞっ
)
として
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
爪先へ
冷
(
ひや
)
りと
中
(
あた
)
り、総身に針を刺されたように
慄
(
ぞっ
)
と寒気を覚えたのを、と見ると一
挺
(
ちょう
)
の
剃刀
(
かみそり
)
であった。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山の新雪! 下界では未だ霜が結んだという噂も聞かないのに、天上の高寒に、早くも洗礼を受けて、甦ったように新しくなった山を見ると、水を浴びせられたように
慄
(
ぞっ
)
となる。
雪中富士登山記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
精
(
くわ
)
しい事情は存じませんですが……お部屋は血でいっぱい、寝台から這いだした夫人が、
扉
(
ドア
)
の
握
(
ノッブ
)
を掴んだまま血みどろになって、さんばら髪で死んでいたその凄さ、——今思い出しても
慄
(
ぞっ
)
と……
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と口ではいえど
慄
(
ぞっ
)
と身の毛がよだつ程恐ろしく思いましたは、八年
前
(
ぜん
)
門番の勘藏が
死際
(
いまわ
)
に、我が身の上の物語を聞けば、己は深見新左衞門の次男にて、深見家改易の
前
(
まえ
)
に妾が這入り、間もなく
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
へへへへと笑いながら、枯れた手を延ばすかと思うと膝頭の火鉢の
抽出
(
ひきだし
)
を引き出した。私は
慄
(
ぞっ
)
として身に寒気を感じた。
尚
(
な
)
お延び上って、暗いランプの光りで抽出しを
見詰
(
みつ
)
めた。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
敷居の上へ
斜
(
ななめ
)
に拡げて、またその衣兜へ手を入れたが、冷たかったか、
慄
(
ぞっ
)
としたよう。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし
俯伏
(
うつぶ
)
しになっている彼の顔を、こうして下から
覗
(
のぞ
)
き込んだ時、私はすぐその手を放してしまいました。
慄
(
ぞっ
)
としたばかりではないのです。彼の頭が非常に重たく感ぜられたのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
水を浴びたように
慄
(
ぞっ
)
となる、霧がたためく間に灰色をして、岩壁を封じてしまう、その底から嘉代吉の
鉈
(
なた
)
が晃々と閃めいて、斜めに
涎掛
(
よだれか
)
けのように張りわたした雪田は、サクサクと削られる
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
其の皿を毀したものゝ指を切るなんぞとは聞いても
慄
(
ぞっ
)
とするようだ、何うして/\、人の指を切ると云うような其様な非道の心では、
平常
(
ふだん
)
も
矢張
(
やっぱ
)
り
酷
(
ひど
)
かろう、其様な処へ奉公がさせられますものか
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その時、その
刹那
(
せつな
)
、その顔を一目見たばかりで自分は思わず
慄
(
ぞっ
)
とした。これはただ保養に寝ていた人ではない。全くの病人である。しかも自分だけで
起居
(
たちい
)
のできないような重体の病人である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分は三沢の話をここまで聞いて
慄
(
ぞっ
)
とした。何の必要があって、彼は
己
(
おのれ
)
の肉体をそう残酷に取扱ったのだろう。己れは自業自得としても、「あの女」の弱い
身体
(
からだ
)
をなんでそう
無益
(
むやく
)
に苦めたものだろう。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
慄
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
“慄”を含む語句
戦慄
慄然
戰慄
震慄
身慄
慄毛
慄々
慄気
慄立
胴慄
大戦慄
顫慄
慄悍
慄動
恐怖戦慄
骨慄
凄慄
寒慄
小慄
心慄
...