愚図々々ぐずぐず)” の例文
旧字:愚圖々々
『まあって云った処で、愚図々々ぐずぐずしていて陥穽わなに落ちちゃあつまらない。そろそろ退却するかな。さあ、金太郎君いらっしゃい』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「何を愚図々々ぐずぐずしているんだえ? ほんとうにお前位、ずうずうしい女はありゃしないよ。きっと又台所で居睡いねむりか何かしていたんだろう?」
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
誰も彼も左を求め右を求め、一節期せつき一節期を愚図々々ぐずぐずに押し通して来たが、方玄綽などは以前に比べるととてもあがきが取りにくくなって来た。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
いじゃありませんか、先生、畚は僕が持っていますから、松なんぞ愚図々々ぐずぐず言ったら、ぶッつけてやります。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう言われるとチチコフも、成程この上こんなところに一刻も愚図々々ぐずぐずしていることはないと気がついた。『ええ、もうおいとましなくちゃなりません!』
運転手は戸をあけて待っているし、人通りのんでいる中だし、愚図々々ぐずぐず言い合うのもかえって見っともないと思って、一緒に円タクに乗ってしまったのさ。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
愚図々々ぐずぐず云わなくても、どうせ否でも連れて行って遣る。これを見ろッ。俺は警視庁の刑事だぞッ」
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
床の中で愚図々々ぐずぐずしていると、小川君が、コロナを五つ六つ片手に持って私の部屋にやって来た。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
それに、日本に愚図々々ぐずぐずして居れば、心にまぬ結婚を父にいられる恐れがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「なに埋った? 何処だ、なにを愚図々々ぐずぐずしているんだ、早く掘って出してやれ」
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
そのうち愚図々々ぐずぐずしているうちに、この己れに対する気の毒が凝結し始めて、ていのいい往生レシグネーションとなった。わるく云えば立ち腐れを甘んずる様になった。其癖そのくせ世間へ対してははなは気燄きえんが高い。
処女作追懐談 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人形師にんぎょうしって、胡粉ごふん仕事しごとがどんなもんだぐれえ、もうてえげえわかっても、ばちあたるめえ。このあめだ。愚図々々ぐずぐずしてえりゃ、湿気しっけんで、みんなねこンなっちまうじゃねえか。はやくおこしねえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
お前が愚図々々ぐずぐず云うなら即席に叩倒たたきたおして先生の処に引摺ひきずっいっろうと思ったその決心が顔色がんしょくあらわれて怖かったのか何か知らぬが、お前はどうもせずに引込ひきこんで仕舞しまった。如何いかにしても済まないやつだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ざまあ見やがれ、おいらが寄席へくのを愚図々々ぐずぐずぬかしやがって、鉄さんだってお所帯持だ、心なくッて欠厘けちりんでもむだな銭を使うものかい、地震除だあ、おたふくめ、」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
多くの人々がその家族を遠い田舎いなかに、いち早く疎開そかいさせているのを、うらやましく思いながら、私は金が無いのと、もう一つは気不精から、いつまでも東京の三鷹で愚図々々ぐずぐずしているうちに
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
愚図々々ぐずぐず塗秘ぬりかくそうとするから、卑怯未練な、けちな、了見が起って、ひとと不都合しながら亭主の飯を食ってるような、猫の恋になるのがある。しみったれてるじゃありませんか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愚図々々ぐずぐずすれば、貴郎あなたいつもに似合わない、きりきりなさいなね……とお蔦が歯痒はがゆがる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は一向、そんな方はぞんざいだったが、この勝山さんもらおうとした時、親類が悪い風説うわさを聞いたとか言って、愚図々々ぐずぐず面倒だから、今の、山河内のを入れたんだが、身分が反対あちこちだとよかった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
成程なッ御夥間おなかまですかい。はははは、うございましょうとも。まあ、お掛けなさいまし。何ね、愚図々々ぐずぐずいや今の口上で追払おっぱらいまさ。貴女がお嬢様でも、どうです、あれじゃいやとはいえますまい。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何を愚図々々ぐずぐずしているんだ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愚図々々ぐずぐずしていたので
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)