悠長いうちやう)” の例文
しかし、いま其樣そんこと悠長いうちやうかんがへてるべき塲合ばあひでない。此時このとき心痛しんつうじつ非常ひじやうであつた。櫻木大佐さくらぎたいさとの約束やくそくすで切迫せつぱくしてる。
かれはかうしてきはめて悠長いうちやううごかすやうでありながら、それでもやとはれたさき扶持ふちはしてもらふので、相應さうおうぜにつゝあるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
悠長いうちやうな時代で、平次が行き着くまで、行倒ゆきだふれの死骸はまだ取捨てる段取にもならず、町内の番太が、迷惑さうな顏をしながら、寄つて來る彌次馬を追つ拂つて居りました。
のつそりとして悠長いうちやう卯平うへい壯時さうじじゆくして仕事しごと呼吸こきふおほきなかたからおろとき、まだ相當さうたうはかどるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「武士が腹を切るのにせつかちも悠長いうちやうもない、——俺は、夜明けまでは生きて居られないのだ」
勘次かんじ醫者いしやと一しよかへるからさういつておしな安心あんしんさせてれといつて醫者いしやもんたゝいた。醫者いしや丁度ちやうどそつちへついでつたからと悠長いうちやうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
橋場の渡しの悠長いうちやうさのせゐもあるにしても、一つは船頭權七の伜の權次が、安賭場やすとばを廻つて歩いて、もう四日も家へ歸つて來ないために、その行先をつきとめるのに手間取つたのです。
これから考へる——といふ悠長いうちやうな言葉に、藤左衞門はまゆをひそめました。