微温湯ぬるまゆ)” の例文
お増は楊枝ようじや粉を、自身浅井にあてがってから、銅壺どうこから微温湯ぬるまゆを汲んだ金盥かなだらいや、石鹸箱などを、硝子戸の外の縁側へ持って行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
隠居の喜平は少しは茶のたしなみもある手さばきで、湯呑へ微温湯ぬるまゆを一杯汲むと、南蛮の秘薬という粉薬を一と口に含みました。
微温湯ぬるまゆだから其儘そのまゝゴツクリむと、からぱらへ五六十りやう金子かねもち這入はいつたのでげすからゴロ/\/\と込上こみあげてた。源
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その中に微温湯ぬるまゆになったところで直にその湯を飲んでまた乾葡萄の貰ったのを喰いまして、腹が出来たから荷物を背負ってだんだん出掛けて行く。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
頭が割れるように痛むので寝たのだと聞いて磯は別に怒りもせず驚きもせず自分でけ、薬罐やかん微温湯ぬるまゆだから火鉢に炭を足し、水も汲みに行った。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
警察へ着いてから、微温湯ぬるまゆの中に腕を漬さなければ、その、シイツを裂いて無器用に巻いた繃帯は、血で固まっていて取れない程、出血が甚だしかった。
アリゾナの女虎 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ここには薔薇色をした微温湯ぬるまゆの噴泉がすみれの薫りをくゆらせつつ噴き上っているのであった。そして三、四人の女たちが現れて我々の着物を脱がせてくれた。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その結果最初の煎じ出しに対しては微温湯ぬるまゆさえあればいいので、この点我国の「湯は煮たぎっているに非ざれば……」云々なる周知の金科玉条とは大部違う。
板の間の隅から、椿の実のはいってる土瓶を取出して、中の水を盥にけた。両手でかきむしった頭に少しつけると、冷りとして飛び上った。薬鑵の中に少し残ってる微温湯ぬるまゆをさした。
特殊部落の犯罪 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
差上げて置きますから、食後に五六粒宛召上つて御覽なさい。え? うです。今までの水藥と散劑の外にです。碎くと不味まづう御座いますから、微温湯ぬるまゆか何かで其儘お嚥みになる樣に。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
け放ち微温湯ぬるまゆに一二分間ずつ何回にもかるようにした長湯をするときに動悸どうきがして湯気に上りそうになるので出来るだけ短時間にあたたまり大急ぎで体を洗わねばならぬかくのごときことを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たらひけがれた微温湯ぬるまゆうへからつちそゝがれた。さうしてれたにはくつたむしろまたかれた。あさから雨戸あまどはなたれてあるけばぎし/\とうへむしろ草箒くさばうきかれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その酸乳を長い桶の内に入れその上へ少しばかり微温湯ぬるまゆを入れて、そうして棒の先に円い蓋の付いたもので上げたり下げたりして充分摩擦まさつすると
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
微温湯ぬるまゆの潅腸が、再び水銀潅腸に後戻りでもすると、望みをもって来た夫婦の心が、また急に曇った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
噛砕かみくだくと不味まづう御座いますから、微温湯ぬるまゆか何かで其儘そのまんまみになる様に。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その分れ加減にしたがって微温湯ぬるまゆを加えなお二時間ばかりも摩擦しているとそのうちにすっかりバタとタラーとが分解されて、バタはバタでこちらへ取収めることが出来る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)