-
トップ
>
-
御新造樣
>
-
ごしんぞさま
其では
種あかしの
手品同樣慰になりません、お
願と
申しましたのは
爰の
事、
御新造樣一つ
何うぞ
何でもお
教へなさつて
遣はさりまし。
彼のそゝくさ男を始めとして女中ども一同旦那さま
御新造樣と言へば、
應々と返事して、男の名をば太吉々々と呼びて使ひぬ。
報ぜんと我々夫婦相談の
上調達致して參りたる此金子ゆゑ
何卒御請取下され候樣是非々々願ひ奉つるモシ
御新造樣然樣なされて下さらば有難く存じますと云ふに妻は何とか
言ひたき
體なるを
此に
就けては
御親父樣、
御新造樣も
大概御心配下すつた
事ではござりません。
友造や、
身體を
謹め、
友さん、
酒をお
飮みでないよ、と
親身に
仰有つて
下さります。
夜もすがら
枕近くにありて
悄然とせし
老人二人の
面やう、
何處やら
寢顏に
似た
處のあるやうなるは、
此娘の
若も
父母にてはなきか、
彼のそゝくさ
男を
始めとして
女中ども一
同旦那樣御新造樣と
言へば
何とも
恐多い
事ではござりますが、
御新造樣に
一つお
願があつて
罷出ましてござります、へい。
御新造樣、
此の
上の
御無理は、
助けると
思召しまして、
其のお
歌を
一寸お
認め
下さいまし。