御不愍ごふびん)” の例文
忠興ただおきの心は、決しておりまする。わたくしの妻へなど、小さい御不愍ごふびんはおかけ下さいますな。私の妻の処置は、私へおまかせ置き願わしゅうぞんじます」
の様な乱暴な子を持った母は嘸心配であろうとわたくしの心を御不愍ごふびん思召おぼしめして、御内聞のお話にして下されば多分のたくわえもございませんが、所持して居ります金子は何程でもあなた様へ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いとゞしく御不愍ごふびんがりさておやひとあはれのことやまづ庭口にはぐちより部屋へやまでうへきたしとてたまひぬいまこそ目馴めなれたれ御座敷おざしき結搆けつこうにはのたゝずまひ華族くわぞくさまにやとうたがひしはいつぢやうさまの御言語容姿おものごしにもりしものそのうつくしきぢやうさま御親切ごしんせつにも女子同志をなごどうし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
不審ふしんせらるゝ御樣子ごやうす是は尤も千萬なり御筋目おんすぢめの儀は委敷この伊賀より御聽おんきかせ申べし抑々そも/\天一樣てんいちさま御身分と申せばたう上樣うへさま未だ御弱年ごじやくねんにて紀州表御家老からう加納將監方に御部屋住へやずみにてわたらせ給ひ徳太郎信房のぶふさ君と申上し折柄をりから將監妻が腰元こしもとの澤の井と申女中に御不愍ごふびん掛させられ澤の井殿御胤おんたね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
拝して、一言のお答えも、それにはございませぬ。ただ、はらはらと落涙なされて……世にも御不愍ごふびん太守たいしゅではある——と溜息ためいきをもらされたきりでござりました
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私心なく、ただ御不愍ごふびんなる女性にょしょうと、末長き御幼少の御方おんかたたちのために——良人たり父たるあなた様の大乗大愛を——かくのごとくいのりまする、おすがりいたしまする
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)