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さまよ
鞄を
脊負つて
来たのは
木樵の
権七で、
此の
男は、お
浦を
見失つた
当時、うか/\
城趾へ
徉徜つたのを
宿へ
連られてから、
一寸々々出て
来ては
記憶の
裡へ
影を
露はす。
木の
下に
徉徜つてると
何處ともなく
叱ッと
云ふ
聲がしたので、
思はず
愛ちやんは
後退りしました、ト一
羽の
大きな
鳩が
顏に
飛びついて、
翼を
以て
激しく
愛ちやんを
搏ちました。
と
叫ぶのが、
遥に、
弱い
稲妻のやうに
夜中を
走つて、
提灯の
灯が
点々畷に
徉徜ふ。
其が
婦を
扶け
曳いた
処は、
夜一夜辿々しく、
山路野道、
茨の
中を
徉徜つた
落人に、
夜が
白んだやうでもあるし、
生命懸の
喧嘩から
慌しく
抜出したのが、
勢が
尽きて
疲果てたものらしくもある。