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干納豆
「
汝ツ
等おとつゝあは
怒りつ
坊だから」と
沈んで
呟くやうにいつた。
彼は
膳の
上に
散つて
居る
飯粒を一つ/\に
撮んで、それから
干納豆は
此れも一つ/\に
汁椀の
中へ
入れた。
汁椀は
手に
取つて、
椀の
腹を
左の
手に
輕く
打ちつけるやうにして
納豆を
平にした。おつぎは
午餐から
開墾地へ
出る
時、
菜にする
干納豆を
汁椀へ
入て
彼の
爲に
膳を
据ゑて
行つたのである。
粘膜のやうに
赤く
濕ひを
持つた二つの
道筋を
傳ひて
冷たく
垂れた
洟を
彼は
啜りながら、
箸を
横に
持ち
換へて
汁椀の
鹽辛い
干納豆を
抓んで
口へ
入れたり
茶碗の
中へ
撒いたりして
幾杯かの
飯を
盛つた。