常日頃つねひごろ)” の例文
「そりゃあね、男の世界はまた違ったものさ。義を見てせざるは勇なき也。常日頃つねひごろの倹約も、あのような慈善に備えて、——」
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
拙郎やつがれ皆目かいもくるはずなけれど、一昨年をとゞし病亡なくなりしぢやうさまの乳母うばが、常日頃つねひごろあそびにてのはなしなりといふ、おとしは十九なれどまだまだ十六七としかえず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見なれている幽谷ゆうこくのしらべをつくる松柏しょうはくたぐいは、少しも経之に常日頃つねひごろのしたしい風景にならずに、どこか、素っ気ない他処よその庭を見るようなはなれた気持であった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
常日頃つねひごろ私は今の女子教育がまだまだ真の文明教育の趣意にとおざかっていると思っております。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
思想のとても新らしい若い男が、あの方と話合った事があった、その男の話は常日頃つねひごろそうした話に耳なれていた私でさえ、びっくりさせられるようなことを、たあ様の前でべらべらとしゃべった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
こんなにふさ/\しているからかつら(註、こゝに云う鬘はかもじのこと)にひねったらどんなに見事になるでしょう、常日頃つねひごろから髪がうすくって困っていましたのに、ほんとうによいものが手に入りました
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
養父やうふ清左衞門せいざゑもん去歳こぞより何處どこ开處そこからだに申分まうしぶんありてきつとのよしきしが、常日頃つねひごろすこやかのひとなれば、さしてのことはあるまじと醫者いしや指圖さしづなどを申やりて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わがみち常日頃つねひごろ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
表町おもてまちとて横町よこちやうとておな教塲けうじやうにおしならべば朋輩ほうばいかわりははづを、をかしきへだてと常日頃つねひごろ意地いぢち、れはをんなの、とてもかなひがたき弱味よわみをば付目つけめにして、まつりの處爲しうちはいかなる卑怯ひきやうぞや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)