うぬ)” の例文
……天秤かついだうぬなりが、何でございますかね、天狗様の下男が清水を汲みに山一つ彼方あなたへといったていで、我ながら、余り世間離れがした心細さに
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「本当にものの分らねえ鈍痴漢とんちきじゃねえか。うぬの気の利かねえことあ考えねえで、女を怨むッて法があるものか」
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
うぬが勝手に尊皇愛国を狭く解釈して濫りに不敬呼ばはりするは恐れ多くも皇室の稜威みいつを減ずるはゞかりある次第だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
……都の奴等やつらと来たら、全く軽佻浮薄けいちょうふはくだ。あのような惰弱だじゃくな逸楽に時を忘れて、外ならぬうぬが所業で、このやまとの国の尊厳をきずつそこねていることに気がつかぬのじゃ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
甚「うぬ、いけッぷてえ奴、能くもの谷へ突落しやアがったな、お賤も助けちゃア置かねえ能くもおれだましやアがったな、サア出ろ、いけッ太え奴だ、お賤のあまも今見ていろ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それもうぬ一個ひとりで鼻に掛けて、うぬ一個ひとりでひけらかして、うぬうぬ披露ひろうしている分の事なら空家で棒を振ッたばかり、当り触りが無ければ文三も黙ッてもいよう、立腹もすまいが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しずかに身を起す。)譬えば下手な俳優があるきっかけで舞台に出て受持うけもちだけのせりふ饒舌しゃべり、周匝まわりの役者に構わずにうぬが声をうぬが聞いて何にも胸に感ぜずに楽屋に帰ってしまうように
うぬが放埒で好きな女郎になりやがつたんだらう——て言つてやりましたよ
と雲おじい、膝に手を置いて突出した、しりうなじじ向けて、うぬが風体をじろりじろり。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うぬが勝手に主人の金をつかやアがって言い訳がないから死ぬのだが、それに附合つきあって死ぬやつがあるものか、死んだ奴は自業自得じごうじとくだ、お前は身の上を旦那に頼んできまりを付けて仕舞って
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこでだましてうぬが手に入れて散々弄んだ揚句にかすを僕に投げてくれた。姿も心も変り果てて、渦巻いていた美しい髪の毛が死んだもののように垂れている化物にして、それを僕に授けたのだ。
母一人娘一人でたいそう苦労をした揚句あげく、親孝行のために品川へ身売りをしたんだ——と言いましたが、うそきゃがれ、うぬ放埒ほうらつで好きな女郎になりやがったんだろう——て言ってやりましたよ
小説家といふ奴はうぬけちな眼玉に写る世間を見て生悟なまざとりした厄介者だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
うぬが悪党の癖に
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)