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寝呆
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ねぼ
ふりがな文庫
“
寝呆
(
ねぼ
)” の例文
旧字:
寢呆
私は
寝呆
(
ねぼ
)
けたように、その真ん中に坐ると、急に怒ったように、そこいらに散らばっていた花札を一つずつ
襖
(
ふすま
)
の方へ投げつけ出した。……
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
見知らぬ異国へでも、
彷徨
(
さまよ
)
い込んだような気持がして、
寝呆
(
ねぼ
)
け
眼
(
まなこ
)
でぼんやりと、
焔
(
ほのお
)
を
瞶
(
みつ
)
めているうちに、ハッとして私は跳ね起きました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
幸い傷は浅かったので、用意の
焼酎
(
しょうちゅう
)
で洗って、
晒
(
さらし
)
でグルグル巻くと、
寝呆
(
ねぼ
)
けたお駒を叩き起して、町内の外科を呼ばせました。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その音に
寝呆
(
ねぼ
)
けて呼びもしない父が、「え?」と返事をして寝返りをうつ、うつろな声。——あわれな父とそしてあわれな娘。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と呶鳴って、いきなり寝床から跳ね上がり、眼ざめて、
宥
(
なだ
)
めても、まだ
寝呆
(
ねぼ
)
けて、何か
昂
(
たか
)
ぶり続けるようなことがままあった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
丁度
(
ちょうど
)
宿直だった私は、
寝呆
(
ねぼ
)
け
眼
(
まなこ
)
で朝の一番電車を見送って、やれやれと思いながら、先輩であり同時に同僚である吉村君と
穴
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そのためだろうか、街角の医者の家を叩くと、
俥夫
(
しゃふ
)
は
寝呆
(
ねぼ
)
けて私がいまだかつて、聞いた事がないほどな
丁寧
(
ていねい
)
な物言いで、いんぎんに小腰を曲めた。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
だがその
自動車
(
くるま
)
は、似ても似つかぬ
箱型
(
セダン
)
だった。客席には新婚らしい若い男女が、
寝呆
(
ねぼ
)
け顔をして収まっていた。
白妖
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
小僧たちが部屋の掃除をしたり、椅子をならべたりしているだけで、中には
寝呆
(
ねぼ
)
け
眼
(
まなこ
)
をして、焼きたてのケーキを盆にのせて運び出している者もあった。
鼻
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
この年になるまで
寝呆
(
ねぼ
)
けた事なんか只の一度も御座んせん。寝言一つ他に聞かれた事が
無
(
ね
)
えんで……不思議といったってコンナ不思議な事は御座んせん。
S岬西洋婦人絞殺事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
寝呆
(
ねぼ
)
け
顔
(
がお
)
の正三が露次の方から、内側の扉を開けると、表には若い女が二人佇んでいる。監視当番の女工員であった。「今晩は」と一人が正三の方へ声をかける。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「もう、すぐですか。」私は、わざと
寝呆
(
ねぼ
)
けたような声で尋ねた。ボオイは、ちらりと腕時計を見て
佐渡
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
寝呆
(
ねぼ
)
けまなこをこすりながら、顔中を口にして、ううんと
大欠伸
(
おおあくび
)
をした
拍子
(
ひょうし
)
に、またもやドカーン。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「おや、お庄ちゃん来たの。」というような調子で、細い
寝呆
(
ねぼ
)
たような目尻に
小皺
(
こじわ
)
を寄せた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
湖面は
一所
(
ひとところ
)
銀のように光り、一所風に波立っていた。永い永い冬眠から、呼び覚まされた湖水の水は、しかしまだ何んとなく
寝呆
(
ねぼ
)
けていた。眠気にドンヨリと膨らんでいた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「おめえ、それあ本気で云うのか、まだ
寝呆
(
ねぼ
)
けてるんじゃあねえのか」
ゆうれい貸屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「どじめ。
寝呆
(
ねぼ
)
けたような返辞をして何処をまごついていたのだ。
汝
(
われ
)
一名が見えぬため、皆で心配していたところじゃねえか」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
尾久の手合は
口惜
(
くや
)
しがって、何を小台の
寝呆
(
ねぼ
)
け野郎——という騒ぎで、こいつはいつまで噛み合せても
埒
(
らち
)
はあきませんよ。
銭形平次捕物控:112 狐の嫁入
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「つまり君はアンマリ考え過ぎているんだよ。犯人の目星はモウ付いているんだからね。
寝呆
(
ねぼ
)
けた小娘の眼で見た事なんか相手にせんでモット常識的に考えんとイカン」
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は部屋の勘定を間違えたのだと思って、すぐ廊下を引き返した。が、ひとつ手前の部屋に来て見るとそれは NO.3 になっていた。おれは何と
寝呆
(
ねぼ
)
けているのだろう。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
もうお正月か、と
寝呆
(
ねぼ
)
け、下の男の子は、坊の
独楽
(
こま
)
はきょう買ってくれるかと言う。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
寝呆
(
ねぼ
)
けていたんじゃねえよ。へん、この
世智辛
(
せちがら
)
い世の中に誰が寝呆けていられますかというんだ。信用しなきゃいいよ。とにかくおれは、ちゃんとこの二つの眼で鞄の化物を見たんだから……」
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「何を
寝呆
(
ねぼ
)
けているのだ」
其角と山賊と殿様
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「おふざけでない、このこけ猿め。いったい、どこに旦那がいるッてえのさ。水を浴びせるよ、
寝呆
(
ねぼ
)
けたことを言い散らすと」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たしかに笑って、すっと消えた。僕は起きてカアテンをはねのけて見たが、何も無い。へんてこな気持だった。
寝呆
(
ねぼ
)
けたのかしら。いくらマア坊が
滅茶
(
めちゃ
)
な女だって、まさか、こんな時間に。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
些
(
すくな
)
くとも私は、小さい時からよく
寝呆
(
ねぼ
)
ける癖があったので、今でも妹によく笑われる位だから、私の何代か前の先祖の誰かにソンナ
病癖
(
びょうへき
)
があって、それが私の神経組織の中に遺伝していないとは
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
襖
(
ふすま
)
の中からそんな声がした。——山岡屋が開けてみると、
丹前
(
たんぜん
)
を被って、
腹這
(
はらば
)
いになっている男が
寝呆
(
ねぼ
)
け眼をあげ
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
寝呆
(
ねぼ
)
けていやがる。僕は、そんな名前じゃないよ。」
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「もうすぐに、
午砲
(
ドン
)
じゃないか。そんな
寝呆
(
ねぼ
)
けた頭で外へ出ると、すぐに、御用になるよ」
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「書留ですか?」私は、少し
寝呆
(
ねぼ
)
けていた。
新樹の言葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ううむ……と
寝呆
(
ねぼ
)
け声を出して、何か、云いかける口を、叱っ、と抑えて
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ありがとう。」僕は
寝呆
(
ねぼ
)
け声で言った。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
突然、ふた声ばかり、
寝言
(
ねごと
)
で人を斬るような気合を発したので、若者部屋の者が皆、がばと、総立ちに刎ね起きて、後で、老人が
寝呆
(
ねぼ
)
けた事と分ってから、
夜半
(
よなか
)
に大笑いしたことなどもあった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寝
常用漢字
中学
部首:⼧
13画
呆
漢検準1級
部首:⼝
7画
“寝呆”で始まる語句
寝呆助
寝呆気
寝呆先生
寝呆豆腐