天道てんとう)” の例文
時計とけいなんか、いらない、お天道てんとうさまさえあれば、たくさんだ。」といって、みんなは、はじめて、太陽たいようをありがたがりました。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
天道てんとうというものはありがたいもんだ。春は赤く夏は白く秋は黄いろく、秋が黄いろになると葡萄ぶどうむらさきになる。実にありがたいもんだ。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「どこの世界に、血の付いた半纏を、これを見て下さいと言わぬばかりに、天道てんとう様の下にさらしておく下手人があるんだ」
「ラザルス君、気の毒だな。そんなことをしてお天道てんとうさまと睨みっくらをしていると、こころもちが好いかね。」
「今に見ておれ。あの夫婦はろくな死にようはせぬから……信心をせぬような犬畜生にはキット天道てんとう様のばちが当る」
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しばらくするとまた唐紅からくれない天道てんとうがのそりとのぼって来た。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定した。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
海が焼原に成って、仕方がない、それじゃ生命も続くまいから、おかの方の青い草木を水にしておけ、と天道てんとうの御情けで、融通をつけて下さる、と云った陽気ですからね。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おいらが隠密なら、おじさんたちに、すがたなど見せるものか、おいらは、天道てんとうさまのまえだろうが、どこだろうが、ちっともうしろ暗いところがないから、平気さ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兼「それが天道てんとう人を殺さずというのだ、世界せけえの事アんな其様そん塩梅あんべいに都合よくなってるんだけれど、人間というお世話やきが出てごちゃまかして面倒くさくしてしまッたんだ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天道てんとう様のおっしゃることにそむいて、一旦都へ出てしまったあたしはきっと罰を受けなければならないんだわ。黙ってここでじっと苦しみに耐えて行かなければならないんだわ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「夏ね。時間をきめてあるわけじゃないんですよ。お天道てんとう様のかげんなんですよ」
天道てんとうさまにも御一同にも相すまなく、心苦しくて落ちつかず、酒でも飲まなけりゃ、やり切れなくなって、今夕御一同を御招待して、わしの過分の仕合せの厄払やくはらいをしようとしたのに
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
俺アくやしくって、くやしくって、天道てんとうさまを恨まずにやいられなかった。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「お慈悲深いお天道てんとうさま! 十八年間も生埋いきうめにされているなんて!」
イマダ天道てんとうノ罰モ当ラヌト見エテ、何事ナク四十二年コウシテイルガ、身内ニ創一ツ受ケタコトガナイ、ソノ外ノ者ハ或ハブチ殺サレ、又ハ行衛ガ知レズ、イロイロノ身ニ成ッタ者ガ数知レヌガ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
真赤なお天道てんとうさんが沈まつしやる……それだのにまだ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
米の飯とお天道てんとう様はついてまわるだろうと思っている。
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あゝ天道てんとうちかさ、神もあるものよ/\
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
「お天道てんとうさま、かねつな。」
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「百も怪談をやっていると、夜が明けるよ、天道てんとう様のカンカン照るところへ、何が出られるんだ」
よくいうことわざに、天道てんとうさまと米のめしはつきものだというが、まッたく世のなかはしんぱいしたものじゃない。人穴城ひとあなじょうがなくなったと思えば、こんないい棲家すみかがたちまちめっかる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……お前が悪かったことに気がついて、本当のことをちゃんと白状したから、お天道てんとう様が生き返らせて下さったのよ。きっと、そうよ。お天道様はいつでもいい子の味方をして下さるんだわ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
天道てんとうさまが、東の空へ金色こんじきの矢を射なさるぢゃ、林樹は青く枝は揺るゝ、楽しく歌をばうたふのぢゃ、仲よくあうた友だちと、枝から枝へ木から木へ、天道さまの光の中を、歌って歌って参るのぢゃ
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
真赤なお天道てんとうさんがあがらつしやる。やつこらさと
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「お天道てんとうさま、くさなわ。」
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
有馬屋が安穏に暮すのは業腹ごうはらだが、それも今更どうにもなるめえ。俺が余計な事をしなくたって、天道てんとう様は見通しだ、——人間の手でどうこうしようと思ったのが間違まちげえだろう
アアありがてえ、こんな冥利みょうりを取りにがしちゃあ、天道てんとうさまから、苦情がくら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天道てんとうさまが、東の空へ金色こんじきの矢を射なさるじゃ、林樹は青くえだるる、楽しく歌をばうたうのじゃ、仲よくおうた友だちと、枝から枝へ木から木へ、天道さまの光の中を、歌って歌って参るのじゃ
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
真赤なお天道てんとうさんが沈まつしやるだに
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「ヘエ——、悪い月日の下に生れましたよ。女房に死なれたあくる年、かたりに引っ掛って身上を仕舞い、その二年後には娘に死なれたんですから。天道てんとう様を怨む張合いもありません」
そうですよ、それにきまってまさアね。いわばみんな、庶民の汗やあぶらや、よからぬからくりで作った不義の財。そいつをこちとらが、狙ッてぶんどったところで、天道てんとう様も、よもやこちだけを
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「馬鹿だなア、付き合えって言えば、飲むことだと思ってやがる。染吉殺しはまだ目鼻もつかないじゃないか。明日の天道てんとう様の出る前に、もう少し当っておきたいところがあるんだ」
木下様のおことばを聞いちゃあ、おれ達は、面目なくて、どうして天道てんとう様が、罰をあてなかったか、ふしぎなくらいなものだ。今日まで、喰いつぶして来た米の手前にも、一世一代、働いてみる。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天道てんとう様に照らされても、とたんに木の葉にもならず、両国で一杯飲んだのが崩し始めで、柳原の土手を酒屋と小料理屋を一軒一軒飲み歩いて、七、八軒目にここへたどり着きましたが
天道てんとう様は見通しでございますよ、親分さん」