大豆だいず)” の例文
清兵衛は、そんなことにはすこしもかまわず、自分は食うものも、食わないようにして、馬にだけ大豆だいずや、大麦などのごちそうを食わせた。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
俵に詰めた大豆だいずの一粒のごとく無意味に見える。嗚呼ああ浩さん! 一体どこで何をしているのだ? 早く平生の浩さんになって一番露助ろすけを驚かしたらよかろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大豆だいずほどもある、じつにみごとなダイヤモンドが六個、黒ビロードの台座の上に、かがやいていたのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
農業の方でも大豆だいずとか胡麻ごまとかを落す時に、まれにはこの動作を必要としている土地もあるらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大豆だいずにはくちかきむしの成虫がうざうざするほど集まった。麦類には黒穂の、馬鈴薯ばれいしょにはべと病の徴候が見えた。あぶぶよとは自然の斥候せっこうのようにもやもやと飛び廻った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
大豆だいず二両三分、酒一升二百三十二文、豆腐一丁四十二文もした。諸色しょしきがこのとおりだ。世間一統動揺して来ている中で、村民の心がそう静かにしていられるはずもなかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お母さんお母さん、あぶらげ何枚なんまいたのむん? お母さんお母さん、やみ市でも大豆だいず持っていくん? 何合なんごうもっていくん? お母さんお母さん、ぼくたち、今日からびんで米つこうか——
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
同じ石英斑岩でも、これから槍下までのは、胡摩塩状斑点が減じて青色を帯び、赤褐色の大豆だいず大の塊が点々混ってやや軟かい、砂礫の多量に含む処を見ると、風化しやすいように思われる。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
裏には真桑瓜まくわうりつるの上に沢山ころがり、段落だんおちの畑には土が見えぬ程玉蜀黍が茂り、大豆だいずうねから畝にさやをつらねて、こころみに其一個をいて見ると、豆粒つぶ肥大ひだい実に眼を驚かすものがある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
作るには大豆だいず玄米げんまいって粉にした物へぬかまじえて白粉しらこを製し
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
西京さいきょうでは大豆だいずを交ぜて煮ますし、大阪では蒟蒻こんにゃくを交ぜて煮ますし、外の処ではお茶を交ぜることもあり、白水しろみず湯煮ゆでる事もありますが章魚の形を崩さずに心まで柔く煮るのは大根で叩くのが一番です。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
石臼いしうすが入ってから後も、大豆だいずなどはネバシビキが多く、豆腐以外にもその用途はいろいろあった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
やっとの思いでこのいびつを取るとまた直径に狂いが出来ます。始めは林檎りんごほどな大きさのものがだんだん小さくなっていちごほどになります。それでも根気よくやっていると大豆だいずほどになります。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
越後えちご高田辺たかだあたりでも、米と大豆だいずをざっとって飯に炊いたものがオケジャ、駿河するが志太しだ郡では飯を炒って味をつけたのをウケジャまたは茶菓子ちゃがしともいっており、紀州きしゅう熊野くまのなどでは
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それよりももっとよろこばれたのは白黒しろくろ大豆だいずったの、つぎには蚕豆そらまめという大粒の豆などで、わたしたちの小さいころには菓子というものはべつにあって、これらを菓子とはいわなかったが
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
住民は各戸かっこ蕎麦そば大豆だいずの若干量を紙袋に入れて持参し、帰りには牛王福杖ごおうふくづえなどを貰って来て耕地の端に刺す。ただその日その後で御狩を行うと、有田郡年中行事にあるのが、少しばかりかわっている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それへ大豆だいずなどをくしたくをして置くのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)