大手おおて)” の例文
六段で二十四個、提灯山笠やまみたいである。パナマ丸は、あたかも、大手おおて搦手からめてを、軍兵によって護られた城郭のように、美しい。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いかにも、これさえあれば、人穴城ひとあなじょう要害ようがいは、たなごころをさすごとく、大手おおてからめ手の攻め口、まった殿堂、やぐらにいたるまで、わが家のごとく知れまする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
参覲さんきん交代で江戸に在勤中の大名は、自身で、国詰め中のものは、代りに江戸家老が、おのおの格式を見せた供ぞろい美々びびしく、大手おおてから下馬先と、ぞくぞく登城をする。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大手おおて搦手からめてから攻めが利く。唯一つ案じられるのは先口だ。それを考えると暗くなる。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いけ名付なづけるほどではないが、一坪余つぼあまりの自然しぜん水溜みずたまりに、十ぴきばかりの緋鯉ひごいかぞえられるそのこいおおって、なかばはなりかけたはぎのうねりが、一叢ひとむらぐっと大手おおてひろげたえださきから
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
此処ここからはもう近い。この柳の通筋とおりすじを突当りに、真蒼まっさおな山がある。それへ向って二ちょうばかり、城の大手おおてを右に見て、左へ折れた、屋並やなみそろった町の中ほどに、きちんとして暮しているはず。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これ、大手おおて一のもん二の門三の門、人穴門ひとあなもん、水門、間道門かんどうもんの四つの口、すべて一時にまもるための手配てはい。いうまでもなく出門しゅつもんは厳禁。無断むだん持場もちばをうごくべからず——の軍師合図ぐんしあいず
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
辻の、このあたりで、月の中空なかぞらに雲を渡るおんなまぼろしを見たと思う、屋根の上から、城の大手おおての森をかけて、一面にどんよりと曇った中に、一筋ひとすじ真白まっしろな雲のなびくのは、やがて銀河になる時節も近い。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大手おおてへかけもどった又八は、すぐ、城兵のなかでも一粒ひとつぶよりの猛者もさ久能見くのみ藤次とうじ岩田郷祐範いわたごうゆうはん浪切右源太なみきりうげんた鬼面突骨斎おにめんとっこつさい荒木田五兵衛あらきだごへえ、そのほか穴山あなやま残党ざんとう足助主水正あすけもんどのしょう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)