夜霧よぎり)” の例文
なおこの歌の傍に、「ぬばたまの夜霧よぎりは立ちぬ衣手ころもで高屋たかやの上に棚引くまでに」(巻九・一七〇六)という舎人皇子の御歌がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
河骨こうほねは、ほんとうに、いつまで、こんなところにいるのだろう、ちいさなはちみずは、なまぬるくて、夜霧よぎりにはぬれることもなければ、いなかのぬまにいたときのように
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
水の上の街は夜霧よぎりの中にぼんやりと黒く浮いて居る。乗客じようかくすくな夜汽車よぎしやから降りた三十人程の者は夜が明けてのちに来る一銭蒸汽を待つつもりか大抵停車場ステエシヨンの待合室へはひつて仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かぜはなかつた。空氣くうきみづのやうにおもしづんでゐた。人家じんかも、燈灯ともしびも、はたけも、もりも、かはも、をかも、そしてあるいてゐる我我われわれからだも、はひとかしたやうな夜霧よぎりうみつつまれてゐるのであつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しかし、彼女かのじょはそのうッすらとした夜霧よぎりそこから、やっと、この城郭じょうかくさかいをなす、外濠そとぼりの水をほのかに見出みいだしたのである。そして、しばらくはそこへ、ジッと目をつけて、手の横笛よこぶえをやすめている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上海四馬路シャンハイすまろ夜霧よぎりい。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すずろけば夜霧よぎり火のごと
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夜霧よぎりの、月そそぐ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)