商家しょうか)” の例文
そのうちに、子供こどもおおきくなったものですから、このむらから程近ほどちかい、まちのある商家しょうかへ、奉公ほうこうさせられることになったのであります。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
初代の家は巣鴨すがも宮仲みやなかの表通りとも裏通りとも判別のつかぬ、小規模な商家しょうかとしもうたとが軒を並べている様な、細い町にあった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
路面に転っていると、群衆に踏みつぶされるおそれがあるので彼は痛手いたでえて、じりじりと、商家しょうかの軒下へ、虫のようにっていった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その時分じぶん鎌倉かまくら武家ぶけ住居やしきならんだ、物静ものしずかな、そしてなにやら無骨ぶこつ市街まちで、商家しょうかっても、品物しなものみな奥深おくふか仕舞しまんでありました。
千八百四十四年、パリの商家しょうかに生まれ、少年の頃から書物しょもつの中で育ったといわれるくらい沢山たくさんの本を読みました。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
下町は知らず、我々の住む山の手では、商家しょうかでも店でこそランプを用いたれ、奥の住居すまいでは大抵たいてい行灯あんどうとぼしていた。家によっては、店頭みせさきにも旧式のカンテラを用いていたのもある。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
商家しょうかの町なので年の暮はなんとなく景気がよい。学校へも、お砂糖の折だの、みかんの箱だの炭俵だの、供餅おそなえだのが沢山もちこまれる。お席書がすめばその日から休みで、かえりには蜜柑みかんがもらえる。
牛女うしおんな子供こどもは、あるとしはる西にしやまあらわれた母親ははおやゆるしもけずに、かってにその商家しょうかからして、汽車きしゃって、故郷ふるさと見捨みすてて、みなみほうくにへいってしまったのであります。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)