呻吟うめき)” の例文
「いまになって」七重が苦痛の呻吟うめきのように云った、「いまになってそんなことをうかがうなんて、あんまり悲しゅうございますわ」
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
つまり押しくるめていえば学士会院の二時の鐘と血だらけの顔、そしてその裏面りめんに潜む革命の呻吟うめき、これがこの話の大体である。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
かくて一昼夜にして始めて呻吟うめきの声きこゆ。その後は飲食をんじき共にやうやう匕もてあてがひ、かくすること半年、竟に愈えぬ。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
けれどもどうやらお綾さんが人間らしくなって来たので、いささか心をやすんじたはいが——寝るとなると、櫛の寝息に、追続いた今の呻吟うめき。……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、呻吟うめきがしだいに耳障みみざわりになってしようがない。猫を追いだすようにこの睡眠の邪魔物じゃまものを遠ざけるわけには行かない。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
人だか獣だか夫までは分らぬけれど、長く引く呻吟うめきの声だ、其の物凄い事は何とも云えぬ。唯ゾッとする許りである。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
僧侶らしい顔もあった。皆の顔は苦痛のために、眼は引釣ひきつり、口はゆがみ、唇や頬には血が附いていた。そこからは嵐のような呻吟うめき叫喚さけびれていた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かすか呻吟うめきを残して置いて、直に息を引取つて了つた——一撃で種牛は倒されたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
お銀様は、その呻吟うめきの声の起るところを知るに惑いました。幸いにしてお銀様は、悪魔の戯れには慣れている。いわんや琵琶の脅迫に怖れて、吾を忘れるようなことはありません。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
園内を歩くと、せみのヌケがら幾個いくつも落ちて居る。昨夜は室内で、小さなものゝ臨終りんじゅう呻吟うめきの様なかすかな鳴声なきごえを聞いたが、今朝けさ見ればオルガンの上によわりはてたスイッチョが居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ですけれど法水さん、やっとこれで、善行悪報の神ムタビヌチオの存在が私に判りましたわ。何故かと申しますなら、暗闇の中から呻吟うめきの声が洩れた瞬間に、私の頭へこのスイッチの事がひらめいたのでした。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
時々苦しげな呻吟うめきの聞える月経時の女のからだが、やっぱり不安であった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
暗い冬の夜の呻吟うめきに惱ませられた北方漂泊者ジプシイのわたしは
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
だが、車軸はいつまでも遠くで呻吟うめきを、つゞけていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
岸破がばをどりぬ。そはなれが呻吟うめきの聲か接吻くちづけか。
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
棄てられし負傷ておひの兵の息絶ゆるつひ呻吟うめきか。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
たちまちにものの呻吟うめき、やはらなる足にれつつ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なほ黒き呻吟うめきをしのび
寂寞 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
不思議な呻吟うめきのようなものが細ぼそと聞えた。省三は耳をたてた。それは玄関の方から聞えて来る声らしかった。彼は怖ろしい予感に襲われて急いでちあがって玄関の方へ往った。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼れはふと目をまして、それと氣がつきながら、妹の樣子を見に行かうともせねば、聲を掛けもしなかつた。寢返りを打つて再び眠りに就かうとした。が、呻吟うめきが次第に耳障りになつて仕樣がない。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
棄てられし負傷ておひの兵の息絶ゆるつひ呻吟うめきか。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
あなや、また呻吟うめきるる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つくは呻吟うめき
如是 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
痛楚なる人が呻吟うめき
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これも呻吟うめき
如是 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
沈痛ちんつう呻吟うめきこの時
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)