台場だいば)” の例文
海辺には松も何も生えて居ません。大津おほつの崎が淡路あはぢとすれすれになつて見える遠い景色をいと見て居るだけの所です。旅館の建ち並んだうしろに昔のお台場だいばがあります。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
最早、天地、ところへだつたやうだから、其のまゝ、銃孔じゅうこうを高くキラリとり上げた、星ひとツ寒く輝く下に、みちも迷はず、よるになり行く狭霧さぎりの中を、台場だいばに抜けると点燈頃ひともしごろ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
両艇は、ほとんど同じ距離をたもちながら、月島つきしまをはなれ、お台場だいばに近づき、またたくまに、そのお台場もうしろに見て、洋々たる東京湾の中心にむかって疾駆しっくしています。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
若い時、のペルリの渡来時分、お台場だいばの工事を引き受け、産を造ったのだそうで、この亀岡氏は先代の目がねによって亀岡家へ養子になったなかなか立派な人でありました。
明治二十年頃(?)福岡市須崎すさき台場だいばに在る須崎監獄の典獄(刑務所長)となり、妻帯後間もなく解職し、爾後、数年閑居、日清戦役後、台湾の巡査となって生蕃せいばん討伐に従事した。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
品川の海に浮かんでいるお台場だいばが、一つ二つ三つ、五つ六つ並んで緑色の可愛かわいい置物のようだ。銀座、芝あたりの町は小人島こびとじまのようだし、芝浦の岸壁がんぺき碇泊ていはくしている汽船はまるで玩具おもちゃだ。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
木更津をすぎて、もう品川しながわ台場だいばもちかい時、目の下の白い雲をつき破って、大怪物があらわれた。『荒鷲』隊が「あッ。」とおどろくまもなく、武田博士の声がりんりんとひびきわたった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
慶応けいおう初年しょねん、私の叔父おじ富津ふっつ台場だいばを固めてゐた、で、或日あるひの事。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
母が日傘ひがさを横にして会釈えしゃくし、最早もう熊本に帰っても宜しゅうございましょうかと云うた。いとも/\、みんなひどい目にったなあ。と士官が馬上から挨拶あいさつした。其処そこ土俵どひょうきずいた台場だいば——堡塁ほるいがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「あの調子だと、水に落ちるまでに、お台場だいばあたりまで、飛んで行きますぜ」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
台場だいば停車場ステエションから半道はんみちばかり、今朝けさこの原へかゝつた時は、脚絆きゃはんひも緊乎しっかりと、草鞋わらじもさツ/\と新しい踏心地ふみごこち、一面に霧のかゝつたのも、味方の狼煙のろしのやうにいさましく踏込ふみこむと、さあ、ひとひと
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
西北の風ですから、まもなく品川しながわから、お台場だいばをすぎて、東京湾にながされていくでしょう。そして、気球の中のガスは、だんだんもれていって、ついには太平洋の海の中へ落ちてしまうでしょう。
灰色の巨人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
前のほうには、品川しながわのお台場だいばが大きく見えてきました。
探偵少年 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)