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叫喚
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けうくわん
其の
暗夜から、
風が
颯と
吹通す。……
初嵐……
可懷い
秋の
聲も、いまは
遠く
遙に
隅田川を
渡る
數萬の
靈の
叫喚である。……
蝋燭がじり/\とまた
滅入る。
「見ろやアイ」「民主々義万歳」など思ひ/\の
叫喚沸騰して、悲憤の涙を
掬びたる青年弁士の降壇を送れり
船は
秒一秒に
沈んで
行く、
甲板の
叫喚はます/\
激しくなつた。
終に「
端艇下せい。」の
號令は
響いて、
第一の
端艇は
波上に
降下つた。
此時私は
春枝夫人を
見返つたのである。
領主
暫時叫喚の
口を
閉ぢよ、
先づ
此疑惑を
明かにして
其源流を
取調べん。
然る
後、われ
將た
卿等の
悲歎を
率ゐて、
敵の
命をも
取遣はさん。
先づそれまでは
悲歎を
忍んで、
此不祥事の
吟味を
主とせい。
ヒヤ/\、大ヒヤなど
頓狂なる
叫喚は他の一隅に
湧き上がれり