取沙汰とりさた)” の例文
女流声楽家三浦たまきと今は故人の千葉秀浦しうほとの関係は一頻ひとしきやかましい取沙汰とりさたになつたので、世間には今だにそれを覚えてゐる人もすくなくあるまい。
大方美登利さんは藤本の女房かみさんになるのであらう、お寺の女房なら大黒さまと言ふのだなどと取沙汰とりさたしける、信如元来かかる事を人の上に聞くも嫌ひにて、苦き顔して横を向くたちなれば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
如何いかにも一月ひとつきばかり以前から取沙汰とりさたした今日は当日。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
承知して居ながら其節そのせつしかと申上べきの處只今たゞいままで打捨うちすておきし段不埓ふらちの至りなり追々おひ/\呼出し長庵と對決たいけつ申付るなりと一まづ歸宅きたくさせられたり偖て越前守殿此一件は容易よういならずと内々にて探索たんさく有りし所かくるゝよりあらはるゝはなしとの古語こごの如く彼の札の辻の人殺しはまつたく長庵の仕業しわざに相違なきこと世上の取沙汰とりさたもあるにより大岡殿は新役しんやく手際てぎは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
尤も氏自身も自分が軍医だつたのは、とつくの往時むかしに忘れてゐるらしく、たまに人が医者の話でもすると、氏はまだ見ぬ地獄の取沙汰とりさたでも聞くやうに変な顔をして耳をかしげてゐる。
すてふでながくいてともなかりしか可笑をかし、桂次けいじ東京とうきやうてさへるいはうではいに、大藤村おほふぢむらひかきみ歸郷きゝようといふことにならば、機塲はたばをんな白粉おしろいのぬりかたおもはれると此處こゝにての取沙汰とりさた
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
藤本ふぢもと坊主ぼうずのくせにをんなはなしをして、うれしさうにれいつたは可笑をかしいではいか、大方おほかた美登利みどりさんは藤本ふぢもと女房かみさんになるのであらう、おてら女房かみさんなら大黒だいこくさまとふのだなどゝ取沙汰とりさたしける
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)