反橋そりはし)” の例文
反橋そりはしを渡る所で、先の人が何かにつかえて一同ちょっととまった機会を利用して、自分はそっと岡田のフロックの尻を引張った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我は彼に從ひつゝ、わが額をば、あたかもこれに思ひを積み入れ身を反橋そりはしなかばとなす者のごとく垂れゐたるに 四〇—四二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
午後二時に南の寝殿へお移りになったのであるが、その通御の道になる反橋そりはし渡殿わたどのにはにしきを敷いて、あらわに思われる所は幕を引いて隠してあった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
反橋そりはしの渡り廊下に、椅子に掛けたり、欄干にしゃがんだりで話したのですが、風呂番の村の一つ奥、十五六軒の山家にはおおきいのがある。一昼夜に米を三斗五升く、と言います。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四面四方に築墻ついぢをつき、三方に門を立て、東西南北に池を掘り、島を築き、松杉を植ゑ、島より陸地へ反橋そりはしをかけ、勾欄こうらん擬宝珠ぎぼしを磨き、誠に結構世に越えたり、十二間の遠侍とほざむらひ、九間の渡廊、釣殿
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蒔絵の模様は、こうを除いたほとんど全部に行きわたっていて、両側の「いそ」は住吉すみよし景色けしきであるらしく、片側に鳥居とりい反橋そりはしとが松林の中に配してあり、片側に高燈籠たかどうろう磯馴松そなれのまつと浜辺の波が描いてある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
うながされてみぎはやみに車おりぬほの紫の反橋そりはしふぢ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
つばくろ反橋そりはしなりにとびにけり 助叟
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
空は今何の反橋そりはし
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
やや大柄な童女が深紅しんくあこめを着、紫苑しおん色の厚織物の服を下に着て、赤朽葉くちば色の汗袗かざみを上にした姿で、廊の縁側を通り渡殿わたどの反橋そりはしを越えて持って来た。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
石の反橋そりはしである。いわと石の、いづれにもかさなれる牡丹ぼたんの花の如きを、左右に築き上げた、めい石橋しゃっきょうと言ふ、反橋そりはしの石の真中に立つて、一息ひといきした紫玉は、此の時、すらりと、も心も高かつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
客は一統、女中たち男衆おとこしゅまで、こぞって式台に立ったのが、左右に分れて、妙に隅を取って、吹溜ふきだまりのようにかさなり合う。真中まんなか拭込ふきこんだ大廊下が通って、奥に、霞へ架けた反橋そりはしが庭のもみじに燃えた。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)