ふたつ)” の例文
旧字:
前日ぜんじつくちあさみぎはるゝ飴色あめいろ小蝦こえびしたを、ちよろ/\とはしつた——真黒まつくろ蠑螈ゐもりふたつながら、こゝにたけぢやうあまんぬる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからまだ不たしかではあったのですが、サセックスの塋穴におけるミイラにされた死骸の上に見つけられたふたつの霊宝について、報知が来ました。
死際しにぎわに汝らは兄弟なり必ず讒誣ざんぶに迷わされて不和を生ずるなと遺誡したが、前話同様野干の讒言を信用してどちらも反省せず相闘うてふたつながら死んだとある
誉当の息子については、よしあしを伝へてゐぬが、其二月前、市村座の一月狂言の「ふたつ蝶々」の相撲場の与五郎は、彼の芸の芸らしいものになつた初めとして、伝へられてゐる。
市村羽左衛門論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
峰の松を目的めじるしに、此方こなたの道の分れ口、一むらすすき立枯れて、荒野あれのの草のうもれ井に、朦朧もうろうとしてたたずむごとき、ふたつの影ありと見えたるにも、猶予ためらわずと寄った。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざっと次のごとく事項を分け列ねた各題目の下に蛇についての諸国の民俗と伝説の一斑いっぱんを書き集めよう、竜の話に出た事なるべくまた言わぬ故ふたつあわせて欲しい。
的面まともに台に向いまして、ちちんぷいぷい、御代ごよ御宝おんたからと言ったのだか何だか解りませぬが、口に怪しい呪文を唱えて、ばさりばさりとふたつかいなを、左右へ真直まっすぐしたのを上下うえしたに動かしました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)