参詣まいり)” の例文
旧字:參詣
溜息ためいきをついたりして、変だと思った事もあったのですが、大阪へいっても死ぬ日に、たった一人で住吉すみよしへお参詣まいりに行くといって、それをめたり
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かつて、山神のやしろ奉行ぶぎょうした時、うしとき参詣まいりを谷へ蹴込けこんだり、とった、大権威の摂理太夫は、これから発狂した。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは秋のことでしたが、母は長い間口癖のように云っていた善光寺参詣まいりをする事になって、喜んでうちを出ましたが、出たっきり何の音沙汰もありません。
母の変死 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのようにお御足みあしが不自由になられてからも、毎日のように、野中の道了様へ、お参詣まいりに行かねばならぬとおっしゃいますので、いっそ道了様を屋敷内に勧請かんじょういたしたらと存じ
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「鰐口の音ですわ。誰か聖天樣しやうてんさまへお参詣まいりしてゐるんですよ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
魂魄こんぱくこのとどまって、浄閑寺にお参詣まいりをするわしへの礼心、無縁の信女達の総代に麹町の宝物を稲荷町までお遣わしで、わしに一杯振舞うてくれる気、と、早や、手前勝手。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところで、お艶様、その御婦人でございますが、日のうち一風呂お浴びになりますと、(鎮守様のお宮は、)と聞いて、お参詣まいりなさいました。贄川街道にえがわかいどうよりの丘の上にございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼻で巻いて、投出されて、怪飛けしとんでその夜は帰った。……しかし、気心の知れたうしとき参詣まいりでさえ、牛の背をまたぎ、毒蛇のあごくぐらなければならないと云うんです。翌晩またひざまずいた。
なにとも名の知れぬ古いやしろがござるわいの、其処そこへお参詣まいりに行くといはつしやる。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ついでと云っては失礼だけれど、その方と御一所に、お参詣まいりをしながら、貝を流しに来られたら、どんなに嬉しかったろうと思いますとね、……それなり内へ帰る気になれなかったもんですから
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かんざしをまだささず、黒繻子くろじゅすの襟の白粉垢おしろいあかの冷たそうな、かすりの不断着をあわれに着て、……前垂まえだれと帯の間へ、古風に手拭てぬぐいこまかく挟んだ雛妓おしゃくが、殊勝にも、お参詣まいりもどりらしい……急足いそぎあしに、つつッと出た。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、いかな事にも、心を鬼に、爪をわしに、狼のきば噛鳴かみならしても、森でうしの時参詣まいりなればまだしも、あらたかな拝殿で、巫女みこの美女を虐殺なぶりごろしにするようで、笑靨えくぼに指も触れないで、冷汗を流しました。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それで火鉢にかじりついたんですけど……そうでもない、ほかの事とは違って、お参詣まいりをするのに、他所よその方が、こうだから、それだから、どうの、といっては勿体なし……一人ででも、と思いますと
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何、ちっとも。……ゆっくりお参詣まいりをなさればい。」
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今時、何と、うしとき参詣まいりにまざまざと出会った。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)